たらいを使い水洗い洗濯を実演する高見明美さん=加西市内

たらいを使い水洗い洗濯を実演する高見明美さん=加西市内

■柔軟剤で頭痛、外出しにくく

 今月のインタビューは、柔軟剤や塗料などに含まれる化学物質が誘因となり体調が悪化する「化学物質過敏症」がテーマ。発症の仕組みなど未解明な部分は多いものの、生活に深刻な影響を受けている人が少なくありません。加西市でクリーニング店「クリーニングハウス ムー」を経営する高見明美さん(62)も当事者で、同じ悩みを持つ人向けに水洗いクリーニングの事業にも取り組んでいます。体験を聞きました。

 -症状はいつから。

 「子どもの頃からたばこの煙で頭痛が起こり、学校プールは塩素のにおいが苦手で、入った後はぐったりと動けなくなりました。今思えば化学物質に過敏だったんだと思いますが、当時は知識がありません。体調はつらいけど、単に体が弱いんだと思っていました」

 「実家がクリーニング店だったことから、自分も家族で経営するように。業界では溶剤を使うドライクリーニングを扱うのが当たり前なんですが、私は1996年ごろから体や環境への影響などを考慮し、水洗い専門の業態に変更しました。お湯を何度も替えて洗うなど手間と時間はかかりますが、研究を重ね、お客さまにも利点を説明しています。こうして、もともと食事も含めて化学物質を避ける生活でしたが、2019年ごろに体調の変化に気付きました」

 -何がきっかけに。

 「当時、化学物質過敏症で体が柔軟剤を受け付けなくなった方からの依頼で、衣類から柔軟剤成分を取り除く研究に取り組み、何カ月も試行錯誤して成功しました。そんなある日、店のスタッフがアイロンがけしているにおいがとてもきつく感じたんです。似たような体験が何度も続き、私自身も柔軟剤に過敏になっていると気付きました。体が反応すると、頭痛や呼吸困難に襲われました」

 -生活への影響が大きそうです。

 「私にとって柔軟剤成分は毒ガスのようなものです。接すると肺の中がちくちく痛みます。思考がまとまらなくなり、体調が悪いときは仕事もできなくなることがあります。病院で診断も受けました。体調や症状には波があり、今は比較的落ち着いていますが柔軟剤は一般的に使われているので多くの人に出会う外出にはハードルを感じます」

 -どう対応を?

 「親しい人には『化学物質に反応して体調が悪くなることがある』と前もって伝えます。ただ、化学物質過敏症は目に見える病気ではなく、身近な人にさえ『気のせいだ』『神経質なだけ』と言われ苦しんでいる人が大勢います。少しでも理解してもらい、できる範囲で配慮してくれるとすごく心強い。一方で、当事者が周囲に全ての責任を押しつけて『なんで理解してくれないの』と責めるのも良くないと感じます。周囲の協力を求めつつ、化学物質を避ける自衛手段も身に付ける必要があります」

 -仕事にも当事者の視点を取り入れている。

 「水洗いクリーニングは全国から依頼が届きます。衣食住の『衣』は命に直結しているとの思いで、過敏症などのために悩んでいる人の力になりたい。昨年は食品工房も立ち上げ、農薬や化学肥料を使わない玄米を使い、過敏症の人でも食べられる保存食を開発しました。切実さを実感するからこそ、取り組みを続けたいです」(聞き手・岩崎昂志)