市民農園で栽培されているソラマメやリーフレタス。現在は夏野菜の栽培が佳境を迎えている=神戸市垂水区下畑町、下畑宝田農園

市民農園で栽培されているソラマメやリーフレタス。現在は夏野菜の栽培が佳境を迎えている=神戸市垂水区下畑町、下畑宝田農園

 家庭菜園ブームが続いています。コロナ禍で密にならずに楽しめる「農レジャー」も広まり、人気の市民農園はキャンセル待ちが出るほどです。しかし「プチ自給自足生活」へのデビューを甘く考え、挫折する人もいます。「野菜づくりの伝道師」と呼ばれ、テレビでもおなじみの藤田智さん(65)に失敗の法則を聞きました。(聞き手・山岸洋介)

■入門に失敗しない最大のコツ

 -多くの人を家庭菜園の世界へいざなってこられました。続かない人もたくさん見てきたのでは。

 「すぐにやめてしまった人には共通点があります。最初の栽培がうまくいかず、満足感が得られなかったというケースですね」

キャンセル待ちが続き、人気の市民農園=神戸市垂水区下畑町、下畑宝田農園

 「例えば中玉トマトなら、きちんと育てればプランターでも1株につき40~45個くらい採れます。なのに3、4個しか採れなかったとか。種まきから2カ月頑張ったのに、期待通り収穫できないと落胆も大きいですよね。その難しさも野菜づくりの魅力なんですけど、そこに到達する前につまずくと『楽しくない』となっちゃう」

 「だから長続きするには最初の成功体験が大切です。逆説的ですけど、入門に失敗しない最大のコツは最初に成功すること。栽培しやすい野菜、確実にうまくいく野菜で始めましょう」

■過保護の結末

 -お勧めの野菜はどんなものがありますか。

 「葉物が手軽でしょう。春ならリーフレタスとかワケギとか、秋ならホウレンソウとかコマツナとか。最短30日くらいで食べられます」

藤田さんが初心者が栽培しやすい野菜としておすすめするホウレンソウ

 「それより難しく、栽培に2、3カ月かかるダイコンやハクサイをやりたいというなら、簡単な野菜と並行してやるといいでしょう。片方が失敗しても『がっかり』の度合いが小さくて済みます」

 -「少ししか採れなかった」というビギナーの失敗で、ありがちな理由は。

 「プランターだと水のやり過ぎが多いですね。『さあやるぞ』と気合十分で前のめりになっている人も、心配性な人も、過保護になっちゃうんです。だからしょっちゅう水をやってしまう。土がいつもぬれていると根が呼吸できず、生育に支障が出ます」

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藤田智(ふじた・さとし)】恵泉女学園大学副学長。秋田県生まれ。岩手大農学部を卒業し、岩手大大学院を修了。NHK「趣味の園芸 やさいの時間」に2008年の開始当初から講師として出演。NPO法人「心と体の健康のため野菜作りの楽しさ広め隊」、NPO法人「武蔵野農業ふれあい村」の理事を務める。