兵庫県の篠山や丹波、淡路島では、白亜紀の地層から恐竜やアンモナイトなどの化石が見つかっています。私が研究しているのも、約1億年前のその時代の地層です。現地で化石を見つけるたびに、当時の生き物の姿や、どのような環境で生き、死後どのような過程を経て化石となったのかを想像し、ワクワクします。生き物たちが、化石となって当時のことを教えてくれているように感じる瞬間です。
1億年-。私たちには想像もつかない長さですが、地球の歴史は約46億年。地球の歴史から見ると、ヒトの歴史は一瞬ですし、1億年も少し前の話です。それでもこの短い時間の中で過去を知り、未来を選ぶためには、化石は重要な手掛かりになる「時間の架け橋」であり、博物館はその橋のたもとにある場所だと思います。
恐竜やアンモナイトなどの化石も、もとは岩石の中に埋もれていたものです。それを見つけ、掘り出し、クリーニングし、研究して、ようやく化石が語るメッセージを受け取ることができ、その一部が博物館の展示室に並びます。
地層もまた、過去を記した本のような存在です。例えば宍粟の山間部には、かつての海底が地層となって残され、貝や植物の化石が眠っていました。そこにはかつての海や川、生きものなど多くの記録が積み重なっていて、生物の出現や進化、環境の変動に至るまで、まるで時間を閉じ込めた本のように、1枚1枚が過去の世界を教えてくれます。貝や植物の化石、火山灰、断層、小さな石ころ-どんな断片も、地球の歴史の一部です。
博物館は、単に「過去を保存する場所」ではなく、「過去を現在に伝え、未来へとつなぐ場所」です。展示や講座を通じて、研究は多くの人のもとへ届き、さらに次の世代の好奇心へとつながっていきます。
次に博物館に足を運ばれる際には、ぜひ展示室の静かな標本たちにも耳を傾けてみてください。そこには数億年の時を超えた命の痕跡と、今ここにいる私たちをつなぐ物語が広がっています。