2022年8月、神戸新聞の連載に、ヒガタアシ(学名=スパルティナ・アルテルニフロラ)のことを書きました。ヒガタアシは北アメリカ東部原産のイネ科の多年草です。その名の通り、潮の満ち引きによって浸かったり干上がったりする干潟に生えます。
草丈は高いもので2・5メートルにもなり、地下茎を伸ばして大きく広がります。在来の干潟生態系を変えてしまうおそれがあることから、日本では現在、ヒガタアシを含むスパルティナ属植物の全種が特定外来生物に指定されています。これまでに、愛知県、熊本県、山口県で確認されており、駆除が進められています。
ヒガタアシは日本だけでなく、ヨーロッパ、オーストラリア、中国、インドなど、世界各地に分布を広げています。ヒガタアシが一面に広がってしまうと、どのような状態になるのか。インターネットで調べると多くの画像が出てきますが、実際に見てみたいと思っていました。
そのような折、台湾に1年間滞在し、研究する機会を得ました。周りの人に聞くと、ヒガタアシは干潟の広がる島の西部で点々と見られるようです。そこで滞在中、北西部の新北市、新竹市、苗栗県、台中市の干潟を訪れ、どのような状況か観察しました。
ヒガタアシの群落の規模は、地域によって異なっていました。北部の新北市では、比較的小さい株が点々と分布していたのに対し、西部の台中市では、ヒガタアシが干潟を草原状に覆っていました。両市の間に位置する新竹市や苗栗県では、大小さまざまな株が広がっていました。
台中市は台湾でヒガタアシが最初に確認された場所であり、その南隣に位置する彰化県では、当時最大規模の群落が観察されています。ヒガタアシは島の西部で最初に定着し、その後発達した群落が起点となって、北部へ広がっていったのかもしれません。台湾での観察を通じ、本種が侵入し、広がっていく過程が少し見えたように感じました。
ヒガタアシは干潟の泥地で旺盛に生育します。広く定着してしまうと、その全面的な駆除は非常に困難になります。ヒガタアシに限らず、外来生物対策では、侵入を予防するとともに、確認された場合には初期段階で迅速に対応することが重要です。























