災害対応で国の司令塔機能を担う防災庁が発足した。発災時から復旧・復興まで一貫して主導する体制を構築するほか、南海トラフ地震や首都直下地震などを念頭に、平時から被害の抑制策を検討する「徹底した事前防災」にかじを切る。
阪神・淡路大震災を経験した神戸新聞社は東日本大震災などを経て、2015年に防災省の創設を提言した。全国知事会や関西広域連合なども必要性を訴えてきた。大規模災害が多発する中、国を挙げて体制を強化する意義は大きい。今後、問われるのは実行力である。即応力を高め、避難所の環境改善など長年の課題を解決するには、新しい知見や民間の力を生かして「中身」の充実を図らねばならない。
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防災庁は内閣直属の組織で、首相がトップを務める。専任の防災相が業務を統括し、職員は、内閣府防災担当の1・6倍となる352人で構成する。
縦割り行政の弊害を打破する役割が期待される。具体的な施策は内閣府や国土交通省、防衛省などに管轄が分かれる。防災相は「勧告権」を持ち、対策の遅れや不備があれば各府省庁に改善を求めることができる。勧告を受けた省庁は尊重義務を負うが、それだけでは十分でない。
防災庁は現地の状況や要請を踏まえて何が課題かを見定め、目標と工程表を作って関係省庁や自治体と調整し、指示や助言に当たる必要がある。指導力の発揮には、普段から横の連携を深められるかが鍵となる。
重要なのが人の育成である。内閣府防災担当は各省庁からの出向者が多かったが、適切な指揮をとれるよう、防災全般の知識を備えた職員をそろえることが不可欠だ。幹部に被災地での勤務経験を義務づけるなど、現場感覚と専門知識を併せ持つ組織にしてほしい。
自治体職員や民間ボランティアらの研修を担う「防災大学校(仮称)」も設置される。防災庁は専門人材の独自採用に加え、被災当事者や支援者を職員に迎えることも考えてはどうか。
■市町村任せは限界だ
平時から備えができていれば、被害を軽減することができた-。私たちが大災害に遭うたびに、多大な犠牲を払って得た教訓である。
国が大量の支援物資を送り込むも避難所に必要な物資は届かず、被災者が体育館などの床に毛布を並べ、雑魚寝を強いられる。24年の能登半島地震でみられた光景が、今年7月の熊本地震でも繰り返された。
防災庁の設置に向けた有識者会議は、具体的に取り組む事項として、避難環境の抜本的改善や避難所の標準化などを提言した。衛生的なトイレ、十分な水や温かい食事、安心して眠れる環境は、最低限保障されるべきだ。避難の「場所」にかかわらず「人」への支援を強め、健康悪化を防ぐ仕組みが重要である。
災害対策基本法は、避難所を含む被災者対応を住民に最も近い市町村が担うと定める。しかし多くの自治体が人口減と高齢化に直面し、職員や予算の多寡で災害対応に格差が生じかねない。職員自身も被災する大災害では、市町村だけでは避難所運営などが機能しなくなる。混乱の中で被災者支援が不十分となり、災害関連死を食い止められない。
■平時から官民連携を
都道府県と国が支援を拡大して避難生活の最低基準を国が保障し、誰ひとり取り残さない支援につなげる。防災庁が最優先に取り組むべき課題である。
被災地への支援を円滑に進めるには、国と地方の意思疎通が欠かせない。28年7月までに設置される地方機関「防災局」は、兵庫県など50近い自治体が誘致に名乗りを上げている。既存の国交省地方整備局との役割分担が不明確で、早急に組織体制や業務内容を詰めてもらいたい。
大切なのが、民間の力や専門性を生かすことだ。例えば、避難所運営はノウハウが豊富なNPOに、物資の搬送や仕分けは運送会社に業務を委託し、自治体は全体を管理する。実現には平時から官民が連携することが大前提となる。
全国災害ボランティア支援機構(神戸市)の高橋守雄代表理事は「被災地への交通費補助の増額、宿泊費への拡充など環境改善を」と要望する。防災庁には、市民が支援に加わりやすいよう、活動に目配りし、後押しする役割も求められる。
南海トラフ地震などの巨大災害はいつ起きてもおかしくない。防災庁の発足を契機に、命と暮らしを守る態勢を根本的に見直したい。























