女性から男性に性別を変更し、結婚してパパになった兵庫県宍粟市の前田良さん(41)が12日、同市山崎町の山崎高校で、自身の生い立ちや多様な性の在り方について講演した。性で悩む人との付き合い方について「理解は難しいかもしれないが、否定せずに受け止めてほしい」と呼びかけた。
生徒に性の多様性について正しい知識を身につけてもらおうと、同校が2年前から前田さんに講演を依頼しており、今回は1年生ら約170人が参加した。
前田さんは子どもの頃から心と体の性の不一致に悩み、思春期で体の変化が表れた時は「絶望した」と振り返る。入学した県外の女子高では、先輩から「男が女装して入ってきた」と冷やかされ、スカートをはきたくないと教員に訴えた際は、「我慢しろ」と理解されなかったという。
就職後に性転換の手術を受け、戸籍上の性別を変えて結婚。第三者から精子提供を受けて子どもに恵まれたが、公的には父として認められなかった。前田さんは「おかしい」と声を上げ、2013年に最高裁が親子として認める判断につながった。
前田さんは、男として生まれたかったとの思いは持ち続けるものの、「今の生き方をしてきたからパートナーや子どもたちと出会えた。とても幸せ」と力を込めた。「生きづらかったら『助けて』と言える心を持って」と締めくくった。
1年の女子生徒(15)は「性で悩む人を否定せず、受け入れられる人になりたい」と話した。(村上晃宏)