田植えの時期を迎え農家では慌ただしさを増す中、深刻な問題となっているのが、農作業中の事故だ。農林水産省によると、2022年に全国で238人(兵庫県は7人)が農作業中の事故で亡くなった。就業者10万人あたりの死亡事故者は11・1人に上り、全産業平均(1・2人)の約10倍と極めて高い。5月や9月などの農繁期に多発する傾向があり、兵庫県や県内各JAなども対策を呼びかけている。
「ヒヤッとした経験は何度でもある」。「下宅原営農改善組合」(神戸市北区)の馬場文雄さん(67)はそう回顧する。
コメと大豆を主に生産する馬場さんの1年は田植えの5月から繁忙期となり、9~10月ごろに収穫のヤマ場を迎える。これまで、トラクターで田んぼから道路に出る際、車体のバランスが崩れて車輪が浮きかけたり、雨でぬかるんだ土の上でスリップして脱輪したりしたことがあるという。
同組合の代表を務める上元清治さん(63)も、多くのヒヤリ・ハットを経験してきた。最も気を付けているのは、コンバインに手を巻き込まれる事故だという。イネを脱穀する際、チェーンに手や服が巻き込まれるおそれがあるため、「だぶついた服や首にかけたタオル、サイズの大きな手袋などはしないよう服装にも気を使う」と話す。
同じ地区ではかつて、トラクターの転倒による死亡事故も発生しているという。雨の時や日没で視界が悪くなった時などは特に注意が必要といい、「どうしても慣れると気が緩む。焦らないことも事故を防ぐために必要だ」と話す。