アスベスト(石綿)の被害で2003年に父親=当時(54)=を亡くした三木市の40代男性が、父親の労災記録を加古川労働基準監督署が誤廃棄したのは違法として国に約300万円の賠償を求めた訴訟の判決が11日、神戸地裁であった。野上あや裁判長は違法性を一部認め、慰謝料など1万1千円の支払いを命じた。原告代理人によると、公文書の誤廃棄で国の責任を認める判決は全国初という。
判決などによると、男性の父親は建築現場で石綿の粉じんを吸い込み中皮腫で死亡。加古川労基署が08年に労災認定した。その後、男性は建材メーカーへの損害賠償請求訴訟を起こし、訴訟に必要な労災記録の情報開示を請求したところ、誤廃棄が判明した。建材メーカーの責任を立証する手段を奪われたとして国に訴えを起こしていた。
判決で野上裁判長は、厚生労働省が05年、石綿関連文書を当分の間保存するよう全国に通達したことに触れ「通達の存在を看過し、文書保存基準の改定を怠った」と指摘。「保存期間を延長しなかったのは許容される限度を逸脱している」として国家賠償法上の責任があるとした。一方、労基署が廃棄を兵庫労働局などに報告しなかったことなどは違法性を認めなかった。
男性は「父も労災記録も戻ってこないが、二度と同じようなことにならないよう改めて対策をしてほしい」とコメント。厚労省は「主張が受け入れられなかったと受け止め、対応を協議する」とし、石綿関連文書については「近日中に都道府県労働局に対し、適正な管理について改めて指示する」とした。