阪神・淡路大震災当時に吸った石綿が原因で中皮腫を発症したとして、新たに労災認定を受けた男性=神戸市中央区
阪神・淡路大震災当時に吸った石綿が原因で中皮腫を発症したとして、新たに労災認定を受けた男性=神戸市中央区

 来年1月で発生30年となる阪神・淡路大震災の被災地で、復旧作業に伴うアスベスト(石綿)被害がまた新たに確認された。労災・公務災害に認定された人はこれで計6人となったが、石綿禍は個人の労災だけでなく、周辺に影響が及ぶ公害と連続しているのが特徴だ。どこで吸引したか不明なまま中皮腫や石綿肺を発症し、労災の対象外の人に向けた国の「石綿健康被害救済制度」では、兵庫県での認定者は1917人(5月末暫定値)。都道府県別で大阪に次いで多く、東京を上回る。

リスク広範囲「検診必要」

 「当時、神戸の街は常にほこりが舞い、空気が違っていた。ある日突然、こんな病気(中皮腫)になるなんてみんな知らないと思う…」。阪神・淡路発生直後から瓦礫(がれき)撤去や解体工事の現場指揮に当たり、6人目の労災認定を受けた阪神間在住の男性(67)が話した。

 当時の粉じん飛散はすさまじいものだった。全壊家屋10万棟、半壊14万棟、一部損壊39万棟。災害廃棄物(公共・公益系含む)は2千万トンに上った。1月の能登半島地震(244万トン)の8倍に当たる。公費解体の期限もあって解体・撤去作業は急ピッチで進んだ。