昨年夏、1本のビデオテープが神戸で見つかった。29年前、阪神・淡路大震災の被災地に災害派遣された陸上自衛隊の活動を記録したものだった。がれきの中での救助活動に飲み水の提供、仮設風呂の設置…。映像は当時「史上最大」といわれた自衛隊の派遣活動を伝える貴重な資料として、地域行事などで公開されている。
解像度の低い、古びた映像。建物の倒壊現場で、緑色のヘルメットと茶色の作業服に身を包んだ自衛官らの姿が映る。具体的な場所は分からない。
彼らは一言も発せず、手やスコップで積み上がったがれきを片付けていく。その傍らでは、緑色の毛布に包まれた遺体がマスク姿の隊員によって運び出されていた。