第2次世界大戦の終戦から79年を迎えた。日本本土では復旧へ動き始めていた8月28日、北方領土に突如としてソ連軍が上陸した。択捉島出身の鈴木咲子さん(85)=北海道根室市=は、銃を持った軍人に家を荒らされ、9歳で故郷を追われた。「戦争ほどばかげたことはない。戦争は絶対にしないという気持ちを揺るぎなく持ってほしい」。現在は語り部として、平和への願いを伝え続けている。
■ソ連兵が銃を構え家に
鈴木さんは択捉島北部の蘂取(しべとろ)村で8人きょうだいの五女として生まれた。2歳の時に両親を病気で亡くし、育ての両親と祖父母の5人で暮らすことに。村の人口は500人弱だったが、夏には東北地方などから来た出稼ぎの漁業者でにぎわったという。
終戦直後の1945年8月28日、ソ連軍が択捉島の留別村に上陸した。「若い娘は連れて行かれる」。うわさが広がると、女性たちは頭髪をそり、顔に墨を塗り、男性の洋服を着て暮らした。