斎藤元彦兵庫県知事らに対する告発文書の問題を調べる県議会調査特別委員会(百条委員会)の協議会が27日、非公開で開かれ、調査報告書の再修正案が示された。関係者によると、告発文書に記された内容の調査をせずに、作成者を特定した一連の県の対応は「公益通報者保護法に違反している可能性がある」とする報告書案で各会派が大筋合意した。
協議会ではさらに「総括」の文案が初めて示され、告発文書の真偽について「一定の事実が確認された」と言及。文書でパワハラと指摘された斎藤知事の言動には「パワハラと言っても過言ではない不適切な叱責(しっせき)などがあった」との表現が盛り込まれた。
元西播磨県民局長が作成した告発文書に対し、斎藤知事は「真実相当性が認められない」として公益通報に当たらないとの主張を重ねているが、総括では公益通報者保護法の「外部公益通報に当たる可能性が高い」と指摘。その上で、文書内容を調査せずに通報者の特定をするなどした県の初動対応は「現在も(法で定められた)体制整備義務違反の可能性がある」とした。前回示された修正案は「違法である」と断定したが、「百条委は法的な認定の場ではない」との意見が出て断定を避け、表現をやわらげた。
一方、県の前総務部長が元県民局長のプライバシー情報を漏えいしたとされる疑惑も取り上げられた。前総務部長は百条委の証人尋問で証言を拒否したものの、複数の県議から「前総務部長から聞いた」との証言があったことから、総括は「告発者つぶしがあったと言われかねない状況」だと非難。「弁護士による調査結果を速やかに公表し、県として刑事告発も含め、適切かつ早急な対応を求める」とした。
百条委は来週中に再度協議会を開き、さらに修正を検討し、報告書を確定させる見通し。奥谷謙一委員長は協議会の終了後、「表現方法やニュアンスで意見が分かれたところもあったが、しっかり協議し最終段階まで来た」と話した。
【公益通報】自分が働く組織の不正を組織内外に伝えること。2000年代に大企業の不祥事が内部告発により相次いで発覚した。だが告発者が会社内で報復を受け、保護が必要という世論が高まり、06年4月に公益通報者保護法が施行された。通報先は、あらかじめ事業者が内部に定めた窓口のほか、権限のある行政機関、報道機関や消費者団体など。事業者が公益通報を理由に、通報者に不利益な取り扱いをすることは禁じられているが、十分に機能していないと指摘され、報復の防止に刑事罰を科す同法改正案が議論されている。