兵庫県の告発文書問題を調べる県議会調査特別委員会(百条委員会)が4日、調査報告書を公表した。告発文書を巡る斎藤元彦知事らの一連の対応は「公益通報者保護法に違反している可能性が高い」とし、「客観性、公平性を欠いており、行政機関の対応として大きな問題があった」と総括した。告発文書で記された複数の疑惑も「一定の事実があった」と認定した。5日の本会議で採決、了承される見通し。法的拘束力はないが、知事の対応が注目される。
百条委は昨年6月から、告発文書に書かれた斎藤知事のパワハラ疑惑など七つの疑惑に加え、文書作成者を特定する調査をした斎藤知事らの初期対応が公益通報者保護法違反に当たるかどうかを審議してきた。
最大の焦点は公益通報の問題で、斎藤知事は文書を「うそ八百」と評し、「誹謗中傷性が高い文書だ」と主張。これに対し、百条委は、文書が公益通報の要件を満たしているなどとし、「外部公益通報に当たる可能性が高い」と判断した。
その上で、県による告発者の特定や、死亡した元西播磨県民局長の私的情報の漏えいなどに触れ、「現在も違法状態が継続している可能性がある」と指摘した。停職の懲戒処分を受けた元県民局長を念頭に、同法が定める「救済・回復措置」などの措置を行う必要があるとした。
一方、告発文書に記された七つの疑惑は「県職員の事前選挙活動」「知事選に向けた投票依頼」を除く5項目で「一定の事実が確認された」と認定した。
斎藤知事のパワハラ疑惑では、執務室や出張先で職員を強く叱責した事実があったとし、「非常に強い叱責や理不尽な言動によって、職員が忖度せざるを得ず、県民本意の職務遂行ができなくなっている面があり、極めて深刻な事態が確認できた」と言及。知事の言動は「パワハラ行為と言っても過言ではない不適切なものだった」と結論付けた。
また、知事が企業から贈答品を受け取った疑惑では「PRなどがなく、個人として消費していたと捉えられても仕方がない行為もあったと言わざるを得ない」と記載。プロ野球阪神・オリックスの優勝パレードを巡る補助金の還流疑惑は、兵庫県警が背任容疑の告発を受けており「捜査当局の対応を待ちたい」とした。
奥谷謙一委員長は「われわれの調査では、告発文書は『事実無根』でも『うそ八百』でもなかった。知事の考えと、調査報告の内容にずれもあると思うが、重く受け止めてほしい」と話した。
【告発文書問題】兵庫県西播磨県民局長だった男性が2024年3月、斎藤元彦知事のパワハラ疑惑など7項目を挙げた告発文書を作り、関係者らに送付した。4月に県の公益通報窓口にも通報したが、県は通報者への不利益な扱いを禁じる公益通報者保護法の対象外と判断。内部調査で誹謗(ひぼう)中傷文書と認定し、5月に停職3カ月の懲戒処分とした。これに対し調査の中立性を疑う声が出て、県議会が6月、調査特別委員会(百条委員会)を設置。証言する予定だった男性は7月に死亡した。9月、県議会の不信任決議を受け、斎藤知事は自動失職。11月の知事選で再選された。疑惑を巡っては、百条委のほか、弁護士でつくる県の第三者委員会も調査している。