神戸市立医療センター西市民病院(同市長田区)は2日、がんの見落としにより、市内に住む60代男性と70代男性が死亡する医療事故があったと発表した。病院側は同日の会見で、医師が誤った対応を取ったために十分な治療や延命ができなかったと認め、遺族に謝罪したと明らかにした。
同病院によると、60代男性は2020年末に声のかすれから耳鼻咽喉科を受診。21年2月には甲状腺に腫瘍が見つかり検査したが、がん細胞の有無を確認できなかった。
その後も同科の主治医は経過観察しか行わず、男性は3年半後の24年8月、別の治療で受診した際に甲状腺乳頭がんと診断された。この時点でがんはステージ4に進行しており、男性は同年10月に死亡。死因はがんで気管が狭くなったことによる窒息だった。
同病院は会見で「腫瘍の発見段階で手術していれば完治の可能性が50%以上あった」との認識を示した。
また70代男性は24年9月、腹部の大動脈瘤を検査するため同病院でコンピューター断層撮影(CT)を受けた。放射線科医は撮影結果のリポートで肺がんの可能性を指摘したが、主治医である循環器内科医は冒頭3行の大動脈瘤に関する記載しか読んでいなかった。
同年12月に男性が呼吸器内科を受診すると肺がんが判明。既に苦痛を和らげる処置しかできず、25年2月に亡くなったという。同病院は「肺がんの記述を読み飛ばさなければ延命治療は可能だった」と説明した。
2件の医療事故を受けて同病院は、診療科内での事例共有や治療方針の検討を徹底。がんを疑う放射線科医のリポートには専用の目印をつけることも決めた。中村一郎院長は「患者が亡くなるという重大な結果を招き、心からおわびする。このような事故を起こさないため再発防止に努める」と頭を下げた。(井沢泰斗)