報告書について説明する第三者調査委員会の工藤涼二委員長(中央)=27日午後、神戸市中央区(撮影・小林良多)
報告書について説明する第三者調査委員会の工藤涼二委員長(中央)=27日午後、神戸市中央区(撮影・小林良多)

 兵庫県の告発文書問題で、文書を作成した元西播磨県民局長(故人)の私的情報を前総務部長が県議らに漏らしたとされる疑惑を調べていた県の第三者調査委員会(工藤涼二委員長)が27日、県議3人に対する漏えいがあったと認定する最終報告書を公表した。背景として「斎藤元彦知事や元副知事の指示で、県議会への『根回し』の趣旨で(私的情報を)開示した可能性が高い」と判断した。

 前総務部長は井ノ本知明氏で、現在は総務部付。県は同日付で、井ノ本氏を停職3カ月の懲戒処分とした。県は「停職という社会的制裁を受ける」などの理由で、地方公務員法(守秘義務)違反での刑事告発はしないと説明した。

 同日、記者団の取材に応じた斎藤知事は「組織として情報管理ができていなかった」と謝罪し、減給などの自身の処分を検討するとした。自らの関与については「指示したという認識は全くない」と否定した。

 井ノ本氏の漏えい疑惑は昨年7月に週刊文春が報道。県幹部らが元県民局長から押収した公用パソコン内の私的情報を、県議らに見せて回ったと報じた。

 これを受け、県は昨年10月に第三者委を設置。元裁判官ら3人の弁護士が今年3月までに、井ノ本氏、斎藤知事、片山安孝元副知事のほか幹部職員、県議ら計20人を聴取した。

 報告書によると、井ノ本氏は当初漏えいを否定したが、今年2月に一転、県議らに会って口頭で説明したと供述を変えた。第三者委は、昨年4月に会派の控室などで私的情報が印刷された資料を示されたとする県議3人の証言は具体的で信用性が高いと判断。目的は元県民局長の人格や人間性に疑問を抱かせ、「告発文書の信用性を弾劾する点にあった」とみなした県議の見方を支持した。

 斎藤知事の指示の有無を巡る証言は食い違った。井ノ本氏は「知事や元副知事の指示に基づき、総務部長の職責として正当業務を行った」と主張したが、斎藤知事は「総務部長としての独自の判断と思う」と、関与を否定。第三者委は、片山元副知事や別の幹部の供述が井ノ本氏とほぼ一致する上、元県民局長の私的情報以外の一般的な議会への根回しすら「指示していない」とする斎藤知事の供述は不自然で「採用することは困難」と結論付けた。

 井ノ本氏は昨年10月の県議会調査特別委員会(百条委員会)で漏えい行為の証言を拒んでいた。井ノ本氏は27日、弁護士を通じて「私の業務行為が情報漏えいと評価されたのは誠に残念。審査請求や執行停止の申し立てを行い正当性を主張したい」とコメントした。

 告発文書問題では県議会百条委のほか、三つの第三者委が設置され、今回で全ての調査報告書が公表された。(井上太郎、若林幹夫)

【告発文書問題】兵庫県西播磨県民局長だった男性が昨年3月、斎藤元彦知事のパワハラ疑惑など7項目を挙げた告発文書を作り関係者らに送付した。県は通報者への不利益な扱いを禁じる公益通報者保護法の対象外と判断。内部調査で誹謗(ひぼう)中傷と認定し停職3カ月の懲戒処分とした。これに対し調査の中立性を疑う声が出て、県が文書内容の真偽を調べる第三者委員会を設置した。男性は昨年7月に死亡。斎藤知事は9月、県議会で不信任決議を受け失職し、11月の知事選で再選された。百条委委員らへの中傷も横行し、議員辞職した元県議が今年1月に死亡。告発文書の内容を調査した第三者委は3月、斎藤知事らの対応が「公益通報者保護法違反」とする報告書を公表した。