家計を圧迫する物価高への対応は、参院選の主要な争点となっている。苦境にある人ほどそのしわ寄せは大きく、暮らしは厳しさを増す。あるシングルマザーの、消え入りそうな声に耳を傾けた。(上田勇紀)
「ここがなかったらもう、生活できません」
JR新神戸駅(神戸市中央区)近くの「みそらこども食堂」。袋に入ったコメや麺類を400円の協力金を渡して受け取り、同区の田中千里さん(39)=仮名=はつぶやいた。
9年前に離婚し、一人で小学3年から中学3年までの子ども3人を育てる。昨年秋、子どもが体調を崩した時など、急な休みが取りづらかった訪問介護の仕事を辞めた。ハローワークの紹介で職業訓練校に通い、月約16万円の失業手当でしのいでいる。
そのうち、自宅マンションのローン支払いに5万円、光熱費や携帯電話代金、学資保険料などで10万円が消える。児童扶養手当などは子どもの医療保険料に充てるため、食費に使えるのは月1万円ほど。「米はこども食堂やフードバンクをいくつも回って、何とか確保しています」。マスク越しに話す声は小さい。
働いているときも暮らしは厳しかった。だが、最近の物価高は異常だ。肉を買うのは月1回。外食は控え、スーパーを訪れる度に値段を細かくチェックする。「20円のもやしを買う回数が増えました」