写真でしか知らない父親の写真を手に、「今も朝晩、手を合わせています」と話す三木宏子さん=神戸市兵庫区
写真でしか知らない父親の写真を手に、「今も朝晩、手を合わせています」と話す三木宏子さん=神戸市兵庫区

 物心ついた時、父親はいなかった。南方へ出征したまま、二度と会えなかった。戦後80年の8月15日、三木宏子さん(82)=神戸市兵庫区=は全国戦没者追悼式に初めて参列し、兵庫県代表として献花する。「どうして帰ってきてくれなかったの」。癒えぬ悲しみとともに、祈りをささげる。

■終戦目前、フィリピンの激戦地で

 「私には父の記憶がない。語ることがないんです」。軍服姿の写真を見ながら、宏子さんはそう漏らす。

 父親の三木正吉さんは香川・小豆島の出身。大阪で家庭を持ち、26歳で生まれた娘に宏子と名づけた。