宝塚市の民家で母や弟ら4人をクロスボウ(洋弓銃)で殺傷したとして、殺人罪などに問われた無職野津英滉被告(28)の裁判員裁判の第5回公判が7日、神戸地裁であった。精神状態を調べた鑑定医への尋問があり、鑑定医は「1か0かという極端な思考に陥りやすい自閉スペクトラム症の特性が、動機の形成に影響を与えた」と説明した。
裁判所からの依頼で2021年12月~22年2月に精神鑑定を行ったうめもとクリニック(大阪市北区)の梅本愛子医師が証言した。
被告の公判供述などによると、母親は家事や育児を放棄し、弟も被告の障害をやゆするなど、家族の存在が精神的な負担になっていたという。梅本医師は、弟との同居が再び始まり、家出していた母親も突如顔を出すようになるなど、環境の変化によって「自宅での居場所を失った」とした。
法曹三者や警察官になることを夢見て大学で学んでいたが、家族の存在からは逃れられないと将来を悲観し、「夢のための努力よりも殺害が正しい選択だと考えた」と説明した。