神戸地裁=神戸市中央区橘通2
神戸地裁=神戸市中央区橘通2

 兵庫県宝塚市の民家で2020年6月、男女4人をクロスボウ(洋弓銃)で撃って殺傷したとして、殺人と殺人未遂の罪に問われた無職野津英滉被告(28)の裁判員裁判の論告求刑公判が15日、神戸地裁(松田道別裁判長)であり、検察側は死刑を求刑した。弁護側の意見は同日午後に述べられる見通し。

 起訴状によると、20年6月4日午前、宝塚市の自宅で祖母=当時(75)=と弟=同(22)、母=同(47)=の頭部にクロスボウの矢4本を発射して殺害し、伯母(55)の首にも1本を撃って重傷を負わせたとされる。

 4人を殺傷した行為について検察側と弁護側で争いはなく、責任能力の程度と量刑が争点となっている。

 検察側は、殺害に適したクロスボウを凶器に選び、側頭部の骨が比較的薄いというインターネット情報を参考に狙いを定めるなど、計画性や合理性があったと主張。被告には発達障害の一種である自閉スペクトラム症や強迫性障害があったが、重症度は低く、母や弟らへの不満という動機も理解可能で、「完全責任能力があった」と主張した。

 弁護側は、判断能力が著しく低下した「心神耗弱」の状態だったと反論。母親から愛情を与えられず、弟の存在も生活環境を不安定にしており、「積み上げたものを全て無にしてしまいたい」という自閉スペクトラム症がもたらす思考が動機の形成自体に影響したと主張している。