宝塚市の民家で2020年6月、男女4人をクロスボウ(洋弓銃)で殺傷したとして、殺人などの罪に問われた無職野津英滉被告(28)の裁判員裁判の第4回公判が3日、神戸地裁であり、精神鑑定した医師らへの尋問があった。弁護側は、被告は精神障害の影響で判断能力が著しく低下した「心神耗弱」の状態だったと主張しているが、医師は「犯行時に精神病の症状はなかった」と証言した。
尋問は、起訴前に精神鑑定した神出病院(神戸市西区)の精神科医、土居正典氏(司法精神医学)らに行われた。
土居医師は、被告には発達障害の一種である自閉スペクトラム症や強迫性障害があったと証言。凶器について詳細に調べるなど、症状による独特な思考が犯行に影響したとしつつ、動機はあくまで母や弟らへの不満で、計画性や違法性の認識もあったとした。
被告は前回までの公判で、事件を起こしたことに後悔はないと供述。土居医師は鑑定当時も被告に反省の言葉はなかったとしつつ、起訴後、同病院に入院中、投薬の影響はあったものの、弟に対して「悪かった」と話したとし「普段は語らないが、無意識のうちに罪悪感があったのではないか」と述べた。