神戸市北区で2010年、高校2年の堤将太さん=当時(16)=が刺殺された事件で、遺族5人が、殺人罪で懲役18年の判決を受けた当時17歳の男(32)と両親に約1億4900万円の損害賠償を求めた訴訟の尋問が21日、神戸地裁であった。男は事件数日後に家族に関与をほのめかしたが、両親は「犯人だとは思わなかった」などと証言した。
男は、23年に神戸地裁で懲役18年が言い渡され、今月14日に最高裁が被告の上告を棄却した。訴状では、両親が男の監督義務を怠ったことが事件を招き、転居させるなどして発覚を遅らせたと主張している。
尋問では事件への男の関与について、両親の認識が焦点になった。母親は「事件翌日、(関与を)疑って『信じていいか』と息子に聞くと『いい』と答えたので信じた」と証言した。
事件2日後、千葉県へ移ったことについては「息子の精神状態を考えて引っ越した」と説明。その後数日の間に、男に「人を刺したかもしれない」と言われたが「家が近所のため事件を目撃し、錯覚して混乱していると思った」と話した。
父親は、事件前後の行動について後悔はないかと問われ「ない。その都度、最良の判断をした」と答えた。