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 兵庫県たつの市新宮町段之上の民家で母娘が刺殺された事件で、指名手配されている大山賢二容疑者(42)の足取りが途絶えてから10日以上が過ぎた。高砂署員が16日に現場付近へ送り届けて半月になる。兵庫県警たつの署捜査本部は周辺を中心に捜索を続けるが、容疑者の行方は絞り込めずにいる。初動対応を振り返った。

 大山容疑者は事件が明らかになる3日前の16日深夜、高砂市内の路上で寝ているところを通報され、職務質問に「人を殺した」「たつの」などと発言した。

 だが詳しい場所や日時、相手は語らず、所持品を調べたが凶器なども持っていなかったため、高砂署は「信ぴょう性が低い」と判断。以前に住んでいた住所が判明したため、車で近くの路上まで送り届けた。この住所は、後に母娘の遺体が見つかる民家の隣だった。

 警察官職務執行法は「犯罪を行ったと疑われる者」に職務質問できると規定。また、精神錯乱や泥酔のため、自傷または他人に危害を加える恐れがある者については「保護しなければならない」と定めている。

 県警幹部は「話は要領を得なかったが、泥酔も錯乱もしていなかった」として保護対象には当たらなかったと説明。署員が調べても「たつの市内での殺人発生」は確認されず、嫌疑は浮上しなかったという。

 県警ではストーカーやDV、行方不明などの「人身安全事案」は24時間態勢で本部へ即時連絡することになっているが、これにも当てはまらないと判断したという。県警地域企画課は「署の対応はやむを得ないものだった」とした。

 3日後の19日午前、母娘の安否確認に訪れた警察官が遺体を見つけて事件は発覚する。捜査関係者によると、高砂署での事案は、19日のうちに高砂署から捜査1課へ連絡があった。

 同課は「殺人の可能性が高い」とみて捜査に乗り出し、大山容疑者の関与も疑った。一方、母娘の傷の状況などから無理心中との見立ても否定できず、現場検証や司法解剖の結果が出るまでは殺人との断定を避けた。

 国が捜査の手続きを定めた「犯罪捜査規範」は、捜査本部を「重要犯罪その他事件の発生に際し、特に、捜査を統一的かつ強力に推進する必要があるとき」に設置する、と定める。捜査幹部は「後で『他殺ではなかった』というわけにはいかない」と明かした。

 他殺と断定し、80人態勢の捜査本部を設置したのは2日後の21日。捜査幹部は「殺人事件を前提とした所要の捜査は当然尽くしていた。初動が遅れたとは考えていない」と強調する。

 情報提供は、たつの署捜査本部(TEL0791・63・0110)へ。