「共連れ」対策の機能を備えたジオエント西宮北口の顔認証システム(阪急阪神不動産提供)
「共連れ」対策の機能を備えたジオエント西宮北口の顔認証システム(阪急阪神不動産提供)

 「共連れ」と呼ばれる手口でマンションに侵入した男に神戸市中央区の女性会社員=当時(24)=が刺殺された事件は20日、発生から1年となった。逮捕、起訴された男は女性に続く形でオートロックをすり抜け、エレベーター内で襲ったとされる。その後も同様の手口による事件が兵庫県内外で相次ぐ中、共連れ対策を強化した最新マンションもあるが、警察や専門家は「個人の防犯対策も重要」と指摘する。(池田大介)

 「女子高校生の制服に興味があり、下校中を狙って行った」。昨年11月、共連れの手口で神戸市灘区のマンションに入ったとして、邸宅侵入容疑で逮捕された神奈川県職員(当時)の男は兵庫県警の調べにそう供述し、容疑を認めた。県警によると、男は事件前日から神戸市内に滞在。下校時間に合わせ、女子高生の後を10分以上つけていた。

 今年4月には同市須磨区のマンションのエレベーターで女性に抱きついたとして、区内の会社員(同)の男が不同意わいせつ容疑で逮捕された。防犯カメラの映像などから、女性がエントランスでオートロックを解錠し、ドアが閉まる直前に男が通過していたことが分かった。

 県警によると、共連れに特化した統計はないが、神戸新聞の取材では、この1年で少なくとも3件は共連れによる事件が県内で発生。東京都練馬区では4月、同じ手口でマンションに侵入した男2人組による強盗事件もあった。

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 これらの事件を踏まえ、独自の対策を施す物件も出始めている。

 「住みたい街」として人気の阪急西宮北口駅エリア。駅直結の賃貸マンション「ジオエント西宮北口」(112戸)では3月末、共連れを検知して警告を発するシステムを導入した。

 顔認証により、扉が閉まる前に住人以外の後続者が入ろうとすると「インターホンから訪問先へご連絡ください」と音声が流れる。単身の入居者が多く、管理する阪急阪神不動産によると「安心できる」と好評という。他の物件への導入も検討しており「侵入者に心理的な圧迫を与えられ、防犯効果が期待できる」とする。

 ただし物理的に共連れを防ぐものではなく、「完全に侵入を防ぐのは難しい」とも。元静岡県警科学捜査研究所心理科長の中山誠・関西国際大教授(犯罪心理学)は「マンションに入られると、外からは見えにくくなる。共連れや2人きりになるのを避けることが大前提」と指摘し、身を守るポイントを「オートロックを解錠する時」と「エレベーターに乗る時」に分けて説明する=図参照

 兵庫県警生活安全企画課の和田卓也課長補佐も「マンション全体で『共連れで入ってくる人は不審者』という意識を持ってほしい」と呼びかける。

 【神戸「共連れ」女性刺殺事件】2025年8月20日夜、神戸市中央区磯辺通2のマンションのエレベータで、住人の女性会社員=当時(24)=がナイフで胸などを刺され死亡した。兵庫県警葺合署捜査本部は2日後、殺人容疑で会社員谷本将志容疑者(36)を逮捕。捜査の結果、事件3日前には同市中央区内で別の女性3人の後をつけ、それぞれのマンションに共連れで侵入していたことも分かった。神戸地検は精神状態を調べる鑑定留置を経て25年12月に起訴。裁判での争点を絞り込む公判前整理手続きはまだ始まっていない。