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梨ワイン「梨花一輪」と「梨花一輪スパークリング」をPRする柴崎一秀会長(右)と製造部主任の宮本洋平さん=香美町香住区三谷
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梨ワイン「梨花一輪」と「梨花一輪スパークリング」をPRする柴崎一秀会長(右)と製造部主任の宮本洋平さん=香美町香住区三谷
二十世紀梨を搾った果汁をチェックする宮本さん=香美町香住区三谷
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二十世紀梨を搾った果汁をチェックする宮本さん=香美町香住区三谷
二十世紀梨を選別して水洗いする従業員=香美町香住区三谷
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二十世紀梨を選別して水洗いする従業員=香美町香住区三谷
梨ワイン造りのきっかけとなった書籍「ワイン町長奮戦記」を手にする柴崎一秀会長=香美町香住区三谷
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梨ワイン造りのきっかけとなった書籍「ワイン町長奮戦記」を手にする柴崎一秀会長=香美町香住区三谷
梱包用カートンは、梨ワインが果実と花、スパークリングワインがナシ籠をデザイン。3本並べて左右の向きを変えると、正面の絵が一つになる=香美町香住区三谷
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梱包用カートンは、梨ワインが果実と花、スパークリングワインがナシ籠をデザイン。3本並べて左右の向きを変えると、正面の絵が一つになる=香美町香住区三谷

 兵庫県香美町香住区三谷の発酵食品会社トキワが、同町特産の二十世紀梨(なし)を原料にした梨ワイン「梨花一輪(りかいちりん)」を1986年に発売して、今年で35年となった。食材の持ち味を引き出す発酵調味料「べんりで酢」や「え~だし」などの主力商品で知られるが、梨ワインは全国でも珍しく、根強い人気を誇る。同社の原点といえる「挑戦の精神」が生んだ逸品。その開発秘話を探った。(金海隆至)

 「梨ワインはトキワのオリジナルで、そこが強み。他社はまねできません」

 新酒の仕込み作業が始まった今月中旬。二十世紀梨を丸ごと機械で搾り、果汁の色や澱(おり)のたまり具合などを点検していた製造部主任の宮本洋平さん(36)が、そう言って、胸を張った。

 二十世紀梨の繊細な味わいと優しい甘さを生かすため、新鮮な果汁の上澄み液のみを別のタンクへ移し、フランス産ワイン用の酵母を使って3~4週間、9~13度で低温発酵させる。通常のワインより低い、アルコール分8%で発酵を止めるのは至難の業だ。工程はろ過作業を経て完成する。

 「ブドウと比べて、二十世紀梨は糖も酸も少なく、個性が弱い。アルコール発酵が困難で、初めは賛同を得られなかった」と、同社会長の柴崎一秀さん(79)は話す。梨ワインの生みの親、その人だ。

 柴崎さんは64年、西宮市の関西学院大学を卒業して帰郷し、祖父の廣造(ひろぞう)さんが始めた食酢としょうゆを製造する家業を継いだ。まだ22歳だった。

 だが、高度経済成長期を経て、大手メーカーの商品が大量に流通し始めると、存続の危機に立たされた。「食酢としょうゆだけでは経営が成り立たない」。事業の将来性を考えると悩みが尽きなかったという。

 しかし、1冊の本との出合いが道を開く。68年に同世代の経営者仲間らと香住青年会議所(JC)を創立。まちづくりの課題にも取り組む中で手にした。

 十勝ワインの産地、北海道池田町の町長だった丸谷金保(かねやす)氏の著作「ワイン町長奮戦記」。昭和20年代後半の冷害で財政が苦境に陥った同町は、ブドウ栽培を始めた。国内で初めて自治体がワイン醸造事業を手掛けた歩みがつづられていた。

 「体が震えるほど感動した」と柴崎さん。繰り返し読むうち、現地を1度訪ねてみたいと、75年、飛行機と夜行列車を乗り継いで同町へ向かった。

 丸谷氏とは会えなかったが、早朝に到着して帰路に就くまで一日中、職員たちが同町直営の農地などを案内し、ブドウの栽培法やワインの醸造技術を丁寧に説明してくれたという。

 自分の足元には必ず何かがあるはず-。地元へ戻った柴崎さんは、池田町から得た教えを、胸に刻んだ。カニや鮮魚あり、但馬牛ありと、但馬や山陰地方の豊かな食材との向き合い方を見つめ直す転機となった。

 そして「素人にワインが造れるなら、醸造家に造れないわけはない」と、梨ワインの商品化を思い立つ。親戚のつてを頼って日本醸造協会(東京)に相談すると、現在ではお酢の研究の第一人者として知られる小泉幸道・東京農業大学名誉教授を紹介された。二十世紀梨を送り、小泉氏が実験的に造ったワインを味見して感激した。「こんなに素晴らしいものか」。いよいよ決意を固めた。

 80年代に入って試作を繰り返し、85年、ワインの製造免許を取得する。ただ、そうはいっても酒造会社でもない新規参入者。税務署の指導は、品質管理から販売先の確保に至るまで厳しかった。それでも、ついに高い壁を乗り越えた。

 86年の発売後も率先して製造現場に立ち、改良を重ねた柴崎さん。2008年にはスパークリングワインも開発した。「スティル(非発泡性の)ワインもすっと飲めるが、私は炭酸ガスを入れたスパークリングの方が好き。これがまたうまい」とほほ笑む。

 ワイン造りへの挑戦は、発酵や味覚の知識をさらに深め、その後、調味料などの分野でヒット商品を生む好循環につながった。

 「続ける限りは付加価値を生まないと。応援してくださる方々がいて、ここまでこられた」と感謝する。輸出も視野に「閉塞(へいそく)感のある時代だからこそ、若い従業員には外に目を向けて新たな道を切り開いてもらいたい」と夢を託している。

■ラベルを一新、現代風 おしゃれな贈答品に

 トキワは今年8月、梨ワイン「梨花一輪」と微発泡性の「梨花一輪スパークリング」のラベルと梱包(こんぽう)用カートンのデザインを一新した。20~40代の顧客層をターゲットに、性差をなくすジェンダーレスやポップな印象を打ち出している。

 香美町香住区の男性デザイナーに依頼し、二十世紀梨の黄緑色を基調に、果実や花などを軽やかなタッチで表現してもらった。研究開発部主任だった滝本桜子さん(30)が中心となって担当。柴崎一秀会長から多くの人の支えや協力を得て開発された経緯をつぶさに聞き、コンセプトを練った。

 手土産や贈答品に使われる機会が増えることを期待し、「今度は逆にこの商品が人と人のつながりを生む場面で役立てば」と願う。

 梨花一輪は180ミリリットル入り506円、360ミリリットル入り968円。梨花一輪スパークリングは同1815円、720ミリリットル入り2800円。トキワTEL0796・36・4001

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