今年、クマの目撃が急増している新温泉町で、特産のナシがクマの食害により深刻な被害を受けている。主力の「二十世紀」を食べ尽くされて出荷を断念したナシ園もあり、生産者は「こんなことは初めて」とうなだれる。(長谷部崇)
■「味覚え」何度も、電気柵など対策強化へ
「全滅だ。1個も残っとらん」
新温泉町竹田のナシ園で生産者の男性(73)が、頭上のナシ棚を見上げて嘆いた。収穫間近だった二十世紀約2万5千個(約7トン)が平らげられ、果実にかぶせていた黄色い袋が辺り一面に散乱。摘果や袋かけなど、これまで手間暇かけて世話してきただけにショックも大きく、「(袋を)拾う気にもならない」と肩を落とした。