昨年末、惜しまれながら閉店した豊岡市日高町殿地区の住民らが営む「殿さんそば」のそば打ち職人、安藤一美さん(69)が、同町栗栖野の道の駅「神鍋高原」で再び腕をふるうこととなった。地元で愛された味を伝承しようと道の駅が声をかけて1日、「神そば」として再出発を果たした。(大高 碧)
殿さんそばは、安藤さんが組合長を務め、同町殿地区の住民らでつくる「殿・村おこし組合」が2005年から運営していた。石臼ひきのそば粉と水のみで作る手打ちの「十割そば」が名物だった。
しかし、高齢化などから年々担い手が不足し、開店当初は5人ほどいたそば打ち職人も10年ほど前から安藤さん一人となった。後継者が見つからず、施設も老朽化したことから昨年末、看板を下ろした。営業最終日には最大2時間待ちの行列ができた。
経緯を知った道の駅神鍋高原は、地元の食文化を守ろうと同駅のレストランでのメニュー提供を安藤さんに呼びかけた。「まさか声をかけてもらえるとは思っていなかった」と安藤さんは喜んで応じた。
道の駅でも、そばの打ち方やつゆの作り方は殿さんそばと全く同じ。安藤さんは「またあの味を楽しんでもらえると思います」と自信をのぞかせる。名前は神鍋高原から一字を取って、神そばとした。
1人前1200円で提供するほか、地元の高原野菜の天ぷら、JAたじまの「コウノトリ育むお米」でつくったおむすびなどがセットになった「神そば天ぷらセット」(1800円)も用意し、但馬地域の味を堪能してもらう。
そば打ちができるスタッフの育成に力を入れるといい、安藤さんやレストランのスタッフは「地域で愛されてきた十割そばの香りやのど越しを味わって」と話している。
神そばの提供時間は、平日午前11時~午後3時(注文は同2時まで)。1日30食。水曜定休。道の駅神鍋高原TEL0796・45・1331