国道沿いの喫茶店「パピヨン」のそばでハチクの花が咲き、店先に飾った=豊岡市出石町寺坂
国道沿いの喫茶店「パピヨン」のそばでハチクの花が咲き、店先に飾った=豊岡市出石町寺坂

 兵庫県豊岡市出石町寺坂の竹林で6月中旬、竹の一種「ハチク」の開花が確認された。専門家によると、ハチクは古文書などの記録からおよそ120年に1度、日本各地で開花と枯死を繰り返すと推定されている。2010年代後半から開花期に入ったと考えられ、但馬でも今後10年ほど続く可能性があり「1世紀に1度の生まれ変わりの姿」に立ち会えそうという。(阿部江利)

■麦の穂のよう、花や葉は茶色に

 近くの喫茶店「パピヨン」の店主伊藤晴美さん(73)によると、竹林の異変に気付いたのは夫だった。店は出石川と並行する国道沿いで、竹林も川沿いにある。竹に麦の穂のような花が見られ、花や葉は茶色になっていた。

 夫は「山野を回ってきたが、これまで見たことがない」と晴美さんに報告した。晴美さんも「店を30年余り続けているが、初めてのこと。花と知ってびっくりしている」と話す。

 日本でみられる代表的な竹は、マダケとハチク、中国原産のモウソウチクなどで、茶せんや竹細工に使えることから人が増やした。竹はイネ科の多年生植物で、遺伝情報が同じクローンのタケノコを生やして増える。

 竹の生態を10年以上研究する森林総合研究所関西支所(京都市)の小林慧人研究員(33)によると、竹の開花は「竹林の最期」に当たる。

 ハチクは九州から北海道南部の人里に分布するが、国内では100年前の研究者らが古文書などを調べ、9世紀ごろから120年周期で開花したことなどを明らかにしている。

 小林さんは17年の静岡県の事例以降、全国の3千を超える竹林でハチクの開花を確認した。ピークを終えた地域、これから開花を迎える地域もあるが、一斉ではなく、数年から10年余りかけて咲く。種はほとんどできず、枯れた後は地下茎の一部が残り、少しずつ再生するという。

 兵庫県内の前回の開花は、1902(明治35)年に始まり、ピークは2、3年後だったとされる。

 小林さんは2017~18年に姫路市や加西市内で開花を複数確認した。県南部ではよく咲いているという。但馬は南部ほどハチクは多くないが、豊岡市と養父市、朝来市で咲いた。

 小林さんによると、ハチクは100年単位の長寿のため、人の知見が引き継がれにくいという。

 小林さんは「身近な植物のわりにちゃんと分かっていないことが多い。開花は今しか見られない。現象を丁寧に調査、記録して、次世代に引き継ぎたい」と話している。