医療サービスの対価となる診療報酬の改定議論が、年末の政府予算編成に向けて本格化する。物価高で膨らむ経費が医療機関の経営を圧迫し、関係者は「土俵際」と危機感を募らせる。医療機関の収入増につながる報酬改定となるかどうかが焦点の一つだ。ただ、仮に報酬引き上げとなれば、保険料や窓口負担などの形で患者らの負担が増える可能性もあり、国民の理解につながる丁寧な議論が必要となる。
東京都世田谷区の世田谷北部病院では、入院患者の食事委託費が4月から約20%上がった。コメの価格高騰など相次ぐ食品値上げの影響だ。馬場裕之院長(60)は「栄養バランスにはこだわりたいが理想と現実のギャップが出てきた」と話す。
地域医療を支えるため救急車での急患受け入れは年間約3千件に上る。手術や内視鏡検査にも力を入れるが、ガーゼや手袋などの医療用品、手術器具の高騰で「報酬の加算分は打ち消されてしまう。利益が多く出る経営は構造的に難しい」と明かす。
医療機関が経営に苦しむのは、診療報酬改定が原則2年に1度で、物価高に柔軟に対応できないためだ。