旧満州から引き揚げ中に亡くなった人々を慰霊するため建てられた「まんしゅう母子地蔵」を前に話すちばてつやさん。デザインは自身が手がけた=2016年4月、東京都台東区の浅草寺
 旧満州から引き揚げ中に亡くなった人々を慰霊するため建てられた「まんしゅう母子地蔵」を前に話すちばてつやさん。デザインは自身が手がけた=2016年4月、東京都台東区の浅草寺

 「NO WAR!!」。22日に死去した漫画家ちばてつやさんは、自身のブログ「ぐずてつ日記」を更新するたび、平和への祈りを記していた。背景にあるのは「地獄」と語っていた戦争体験。戦前・戦中生まれが減少する中、ちばさんの残した作品が、重みを増している。

 1939年東京・築地生まれ。41年に旧満州(中国東北部)に渡り、父親が勤めていた印刷会社の社宅で暮らした。終戦後、中国の人々やソ連兵から身を隠しつつ、約1年かけて引き揚げた。

 2024年のインタビューでは「食べる物がなく、次々に死んでいく。昨日『てつや頑張れ』と言ってくれたおじさんが亡くなり、その足を持って死体置き場まで引きずっていったこともある」と振り返った。代表作「あしたのジョー」に登場するボクサー力石徹の死に至る減量シーンは、引き揚げ時に骨と皮だけになっていた日本人の姿がモチーフだったという。

 戦争は、子どもだったちばさんの無意識下をも縛り、中国人に対する感謝や罪の意識、恐怖を、いや応なく背負わせた。