仲之町通りにある「吉原大門跡」=東京都台東区
 仲之町通りにある「吉原大門跡」=東京都台東区

 NHK大河ドラマ「べらぼう 蔦重栄華乃夢噺」の舞台として注目される東京都台東区千束の吉原かいわい。吉原遊郭で育ち、江戸の出版王に上り詰めた主人公蔦屋重三郎(蔦重)ゆかりの地を巡った。

 東京メトロ日比谷線三ノ輪駅から歓楽街を抜けて、仲之町通りに入ると蔦重が付近で書店を営んだ吉原大門跡に着く。かつては遊郭唯一の出入り口で、監視役が女性の出入りに目を光らせていたそうだが、現在は「よし原大門」と記された街灯が立っているのみ。

 大門跡からS字にカーブした道の先には「見返り柳」が植えられている。添えられた説明板によると、辺りで遊び帰りの客が後ろ髪を引かれる思いで遊郭を振り返ったことが名前の由来という。

 仲之町通りを戻り、全国の遊郭や赤線地帯に関する専門書を扱う書店「カストリ書房」へ。2016年、他に類を見ない店を開いたのは店主の渡辺豪さん。店の一角には、渡辺さんが各地で収集した文献などを有料で閲覧できる資料室もある。

 店にはドラマに登場する吉原の案内書「吉原細見」の復刻版も。「書籍や資料に触れて、遊郭があった時代と現代社会がどうつながっているのかを考えるきっかけにしてほしい」と渡辺さん。

 千束エリアから足を延ばして、発明家、戯作者など多彩な顔を持ち、蔦重と関わりがあった平賀源内の墓をお参りする。清掃が行き届いた墓には生花や飲み物が供えられ、地域住民から大切にされていることを実感した。

 三ノ輪駅方面に戻り、2万5千人もの遊女や遊郭関係者が眠るとされる浄閑寺を訪ねた。通称「投込寺」。寺によると、大地震などの際、遊女が投げ込むように葬られたことから、そう呼ばれるようになったという。本堂裏手にある「新吉原総霊塔」の基壇に刻まれた「生れては苦界 死しては浄閑寺」の句が心に染みる。往時をしのび、手を合わせた。

 【メモ】カストリ書房資料室の利用料は2時間で千円。