世界のクラシックファンが熱い視線を送る第19回ショパン国際ピアノ・コンクールがポーランドの首都、ワルシャワで開催中だ。国際的な演奏家への登竜門とされるコンクールは少なくないが、その中でもずばぬけた注目度を誇る“ショパコン”。3回の予選を経て本選進出の約10人を選ぶ長丁場。1次予選から本選までの全ての演奏がインターネットで生配信され、各国のファンが中継画面にくぎ付けになりながら、チャットで熱い声援を送っている。
多くのファンを引きつけるのが、高画質で撮影されたYouTube動画だ。2021年の前回は、大会期間中の1カ月で3750万回再生されるという記録を残した。最も再生回数が多かったのが2位に入賞した反田恭平の本選の演奏で、480万回に上った。3次予選で惜しくも敗退した「かてぃん」こと角野隼斗の演奏動画も240万回超再生されている。YouTubeの公式チャンネルにアップされた動画を再生する約半数が日本からのアクセスだったという。
10月3日に始まった1次予選には、前回に続く出場の牛田智大ら日本勢13人も登場。牛田の1次予選の動画は2日で約30万回再生されるほどの人気ぶりを見せる。山縣美季や桑原志織らの動画にも「素晴らしい!」「品があって、美しく、可憐な音色」「I love her performance」「出色的音色掌控能力」とさまざまな言葉で感想が並ぶ。
そんなショパコンが今回、新たに始めたのがTikTokのライブ配信だ。主催する国立ショパン研究所は8月に東京のポーランド大使館で開いた記者会見で「若者にとってなじみに深いアプリなので、これまで以上に若い方に興味を持って鑑賞していただきたい。裾野を広げるという意味で重要だ」と期待していた。
そのTikTok、2日目に登場した中国のシュエホン・チェンには「アジアはピアノでも新たな超大国だ!」といった威勢のいいコメントが書き込まれていた。
1次予選の生配信の視聴者数は、YouTubeが1万人を超すこともあるのに対して、TikTokは1000人程度とまだ広がりを欠く。ただ、音楽ファンの熱心で時に辛口なコメントも飛び交うYouTubeに対して、TikTokはハートやバラのマークが飛び交い、にぎやかな雰囲気。TikTokのチャンネルフォロワー数は6日時点で4千人超だが、チャンネルに対する「いいね」の数は40万超。フォローしていない視聴者にも届くメディアの特性を生かし、さらなる広がりも期待できそうだ。
国立ショパン研究所の担当者は「最も重視しているのがオンラインでも鑑賞できること。時期や場所によらず全ての方にショパンコンクールをご覧いただくことができる」とコメントしている。
× ×
「クレッシェンド!」は、若手実力派ピアニストが次々と登場して活気づく日本のクラシック音楽界を中心に、ピアノの魅力を伝える共同通信の特集企画です。