8年に及ぶ経営の混乱を経て、東芝が再興に向けたスタート地点に立つことになった。
国内投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)などの国内連合による東芝への株式公開買い付け(TOB)が成立した。年内にも上場廃止となる見込みだ。経営改革を迫る海外の「物言う株主」の圧力にさらされる状況から解放される。
新たな株主の下で、東芝は定評のある技術力をさらに磨いて競争力を高めてほしい。2022年3月に就任した島田太郎社長は、データサービスを収益の柱とする企業に変革するビジョンを示している。再生への道筋を従業員と共有し、組織を覆う閉塞(へいそく)感をぬぐい去る努力が、経営陣には一層求められる。
JIPが中核を担う国内連合には、オリックスや中部電力、ロームなどの国内約20社が名を連ねる。東芝の企業価値を高めた後に再上場を目指す。非上場となるだけに、新株主は東芝の経営再建をしっかりと監視し、利害関係者への説明責任を果たさねばならない。
東芝の迷走は、15年の不正会計問題にさかのぼる。米原発事業の失敗で経営危機に陥り、医療機器や半導体メモリーなどの優良事業を次々と手放した。債務超過を回避するために頼ったのが海外投資ファンドだ。しかし、経営陣とファンドの対立で混迷が深まった。
窮した東芝は、経営再建の支援者を公募するという異例の手法に打って出た。物言う株主の影響力を排除する狙いからである。23年3月、JIPが提案した買収案を受け入れ、9月20日のTOB成立に至った。
海外ファンドが短期的な収益を求める中、東芝が中長期の視点で経営戦略を描きにくい面があったのは確かだろう。だが、物言う株主と正面から向き合わず、関係悪化を招いたのは東芝側だ。
さらに20年の株主総会では、海外ファンドが経営陣に都合の悪い提案をしないよう、経済産業省と一体になって不当な圧力をかけたとされている。コーポレートガバナンス(企業統治)や法令順守の意識に欠けるばかりか、日本の資本市場への信頼性を損なった。
株主との対話の在り方や、市場のガバナンス強化に対する重い教訓を残した。他の企業は他山の石としてほしい。
約2兆円に上るTOB資金のうち、1兆2千億円は東芝が返済義務を負う。JIPは事業の切り売りはしない方針だ。巨額の債務を抱えながらの再出発には、スピードも求められる。東芝の経営陣は、出資元との連携を深めるなど総合力を発揮して次代の柱を育てる必要がある。
























