認知症の大半を占めるアルツハイマー病の治療薬「レカネマブ」(商品名レケンビ)について、厚生労働省は薬事承認し、12月24日までに保険適用する方針を示した。
製薬大手エーザイと米バイオジェンが共同開発した。患者の脳内に蓄積して神経細胞を傷つけるタンパク質の一種、アミロイドベータに結合し、除去する効能がある。臨床試験(治験)では、症状の悪化を27%抑えることができた。進行を7カ月半遅らせることに相当するという。
原因とされる物質に直接働きかける薬の承認は初めてだ。米イーライリリーも同様の働きを持つ治療薬を承認申請している。各社がさらに研究を進め、完治できる薬の開発を目指してほしい。
レカネマブの処方対象はアルツハイマー病の早期や前段階の患者に限られる。診断には陽電子放射断層撮影(PET)検査が必要だが、装置のある医療機関は少なく、地域による偏りもある。まず検査体制の整備が急務だ。
副作用にも注意が要る。血液の流れを良くする薬を使っていたり、特定の遺伝子を持っていたりすれば脳出血などのリスクが高まる。国内には早期や前段階の患者が500万~600万人いるとみられるが、実際に処方できるのはこのうち1%程度とされる。
完治するわけではない点も認識しておきたい。あくまで進行を遅らせる薬なので、投与されても回復したとの実感は抱きにくいだろう。期待すべきは患者本人の生活の質が維持され、周囲の介護負担が軽減する点と言える。
既に承認されている米国では、薬価が1人当たり年2万6500ドル(約390万円)に相当する。日本でも高額が予想される。社会保障費の抑制が求められる中、必要な患者を早期に見極め適切に投与することが不可欠となる。
認知症の高齢者は2025年には約700万人に達する見込みだ。65歳以上は5人に1人が該当し、誰もがなりうるという前提で対策を講じねばならない。
6月に成立した認知症基本法は「予防」よりも「共生」に重きを置いた。認知症の人が尊厳を保ちながら希望を持って生きられるよう、国や自治体に社会参加などの施策推進を求めている。9月には認知症の当事者が参加する政府会議も発足した。
判断力などが衰えた認知症の人が住みやすいまちは、誰にとっても住みやすいまちといえる。治療法の開発に期待をかけると同時に、国民ひとりひとりが認知症への理解を深め、ともに暮らすことができる社会をつくっていきたい。

























