能登半島地震の発生からきょうで3カ月となるが、被災地は生活再建の糸口すら手探りの状態にある。
元の住まいに戻れるのか。建設される災害公営住宅はいつ、どこに整備されるのか。事業の再建にどんな支援があるのか。困難に直面する被災者が復旧、さらに復興するまでの課題は多岐にわたり、経済的、精神的負担が日に日に重くのしかかる。
大災害が起きるたび、反省や教訓を生かし対策は強化されてきたが決して十分ではない。政府や自治体は、個々の実情に即したきめ細かな支援が切れ目なく届くよう、知恵を絞る必要がある。
能登の被災地では、65歳以上の割合が50%を超える地域が多い。自ら申し込まないと支援を受けられない「申請主義」が高齢の被災者らを切り捨てているとの批判は根強い。
その壁を越える手だての一つとして、伴走型の支援手法「災害ケースマネジメント」がある。自治体が福祉や法律の専門家らと連携し、被災した人を戸別訪問して悩みや課題を丁寧に聞き取り、公的支援や民間のサポートにつなげる仕組みだ。
東日本大震災では仙台市や岩手県大船渡市で実践され、能登半島地震の被災地でも動き出した。ただ、現状では支援の網から漏れる被災者を救う取り組みや財政支出の根拠となる法律はなく、自治体によって対応に格差が生じかねない。日本弁護士連合会などは国に法制化や自治体への財政支援を求めてきた。
政府は昨年5月、災害ケースマネジメントを市町村などの努力義務として防災基本計画に盛り込んだ。しかし、被害が大きい自治体ほど人手が不足し支援の漏れが生じがちだ。必要なスキルを持つ人材や財源を現地の自治体だけで確保できない恐れもある。専門知識を生かせる民間との連携や他の市町村の応援、都道府県との役割分担が欠かせない。
最大300万円が支給される被災者生活再建支援法の対象が「世帯」であることも、個人の事情が考慮されない問題点として指摘される。
能登地震で政府は高齢世帯などを対象に、300万円を特例で上乗せする方針だが、現行の支援法で不十分というなら、法自体を抜本改正すべきではないか。
兵庫県弁護士会の津久井進弁護士は「家の壊れ方だけを指標とするのでは被災者の分断につながりかねない。その人が暮らせるかどうかで考えるべきであり、生活の困難さへの理解が欠けている」と話す。
取り残される人が減れば、生活再建は早まる。必要なのは、暮らしに根ざした息の長い支援だ。命をつなぐ最善の策を共に考え、法制度や財政措置で後押しせねばならない。