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 国連によるイランへの経済制裁が再び発動した。

 核開発を拡大させたとして英仏独が復活を主導し、イラン側はウラン濃縮停止など制裁回避への条件を拒否した。米英仏独中ロの6カ国とイランが2015年、核開発の制限と引き換えに制裁の解除で合意した国際的な枠組みは実質的に崩壊した。

 穏健派とされてきたペゼシュキアン大統領は「邪悪で下劣な者たちに屈服することはない」と猛反発し、国際原子力機関(IAEA)への協力停止を示唆した。核施設の査察ができず核開発に歯止めがかからなくなれば、周辺諸国の核開発の連鎖を招く恐れがある。双方が歩み寄り、外交的解決を図らねばならない。

 制裁の復活により、イランへの武器禁輸や核開発に関わる個人と企業の資産凍結が再開される。しかし、米国の独自制裁などでイラン経済はすでに悪化しているため、効果は限定的とみられる。

 イランへの対応を巡り、国際社会の分断が浮き彫りになった。制裁復活を求める欧米に対し、中国やロシアは「違法な手続き」と反発し、原子炉建設の支援や原油輸入を継続する構えだ。制裁再開を急ぐ必要があったのか、疑問が拭えない。

 イランの核開発を巡っては、米国の責任が極めて重い。

 第1次トランプ政権は18年、核合意から一方的に離脱し強い制裁を科した。反発したイランは合意にそむき高濃縮ウランの製造を進めた。今年6月、イランと核に関する協議中にもかかわらず、米国はイスラエルに加担し核関連施設を攻撃した。国際法を無視した暴挙でしかない。

 「力による平和」を唱えるだけではイランの態度を硬化させ、核拡散防止条約(NPT)からの脱退を招きかねない。核開発が進みイスラエルが再び攻撃すれば、本格的な交戦に突入するリスクもある。

 米国はイランと直接交渉する意向を示しているが、あくまで国際協調に基づく解決が必要だ。双方と良好な関係を築いてきた日本は両国への働きかけを強めるべきだ。

 イスラエルの核保有を黙認する「二重基準」の解消も求められる。イスラエルはNPTに未加盟で、実態は不明だ。後ろ盾の米国は加盟を促し、IAEAの査察を受け入れるよう強い対応をとってもらいたい。

 中東の和平には核問題に加え、パレスチナ問題の解決が欠かせない。ガザ地区での停戦実現に加え、ヨルダン川西岸地区へのイスラエルの入植を止め、パレスチナ国家との共存を後押しすることが求められる。

 パレスチナ問題は「アラブの大義」とされ、紛争の火種となってきた歴史を忘れてはならない。