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 夏の間は落ち着いていたコメ価格が、再び上昇し始めた。

 農林水産省が集計した全国約6千の小売店の平均価格(5キロ)は、9月22~28日は前週比57円安の3995円となった。それまでは2週続いて6月初め以来の4千円台だった。7、8月の3千円台半ばから1割前後も値上がりしたことになる。

 出荷が始まった新米に高値がついている一方、安価な備蓄米の販売が減ったのが要因とされる。政府が目標に掲げる3千円台を持続させるのは容易ではない。

 農水省が発表した今年7月から1年間の見通しでは、主食用米の生産量が需要量を17万~48万トン上回る。この数字を見る限り、昨年の「令和の米騒動」が再燃するとは考えにくいが、出回るコメを早めに囲い込もうと事業者が躍起になっているのだろう。

 コメ価格を安定させるには、供給不安の払拭が欠かせない。新米のシーズンの本格化を迎え、農水省は各地の収穫状況などの情報をいち早く公開するべきだ。

 これまで農水省はコメの出来具合として都道府県別の作況指数を公表し、業者間の取引価格の指標として使われてきた。サンプル水田の収穫量を過去30年の平均値などと比べた数字だが、国の減反政策で収穫量全体が落ち込んでいる現状を反映していないなどの批判があった。

 そこで今年から作況指数を廃止し、新たに「作況単収指数」を発表する。ただこれもサンプル水田の収穫量比較という点は同じで、比べる時期を見直したに過ぎない。

 かつての冷害発生時にはコメの収穫量が落ち込み、作況指数から全国的に不作に陥っていることが読み取れた。しかし最近の酷暑の影響は収穫量だけではわからない。高温障害で精米の際に米粒が割れてしまうケースが多いためだ。

 小泉進次郎農相は、人工衛星のデータなども活用し既存の収穫量調査の精度を高める方針を示している。実際に市場に出せるコメの量を把握する手法が求められる。

 当初96万トンの在庫があった備蓄米は、相次ぐ放出により29・5万トンに減少する。買い戻しを急げば値上がりを招くため、政府は数年がかりで市場から調達する方針だ。

 しかし10年に1度の不作に備える趣旨を踏まえれば、速やかに在庫を元に戻すのが筋である。

 日本が無関税で輸入する「ミニマムアクセス米」の活用や不要になった業者からの引き取りなど、市場の価格形成に大きな影響を及ぼさない方法を組み合わせて備蓄米を調達し、食料安全保障につなげなければならない。