兵庫県内にある42の公的病院のうち88%が2024年度に経常赤字となったことが本紙調査で分かった。うち7施設は、診療報酬が上がらなければ「すぐにでも」「近い将来」自分の病院がつぶれると答えた。
全国の国立大病院の25年度決算も、過去最大の総計400億円超の経常赤字になる可能性がある。民間では採算が取れず切り捨てられかねない分野を担うのが公的病院の使命だが、赤字が膨らみ破綻に追い込まれればそれも果たせない。地域医療を支える公的病院の経営の在り方を官民で考える必要がある。
赤字額が急増しているのは、国が決める診療報酬で病院収入が左右されるためだ。
物価高騰で医療機器や薬の価格が上がり、職員の給与も人事院勧告などにより引き上げられた。しかし診療報酬の改定は2年に1度で、次は26年度まで改定されない。その結果、コスト上昇分が病院側の経営を圧迫している。
全国自治体病院協議会など6団体は9月、連名で「26年度の診療報酬改定率は10%超が必要」と厚生労働相宛てに緊急要望書を出した。前回の改定は0・88%引き上げにとどまっており大幅引き上げは容易ではない。
国民医療費の膨張には歯止めがかからない。23年度は48・1兆円と前年度から3%増え、3年連続で過去最大を更新した。高齢化でさらなる拡大は必至だ。国民負担も重く、7月の参院選では社会保険料の軽減を複数の政党が掲げた。
診療報酬引き上げは必要だが、患者が支払う費用の増加にもつながり、病院側の収支改善に向けた努力は欠かせない。
一方、医療資源の適切な配分を考えることも重要だ。住民の「痛み」を伴う医療施設の統合再編には、医療設備の刷新や医師の確保に一定の効果がある点に留意したい。
人口減で地域が衰退する中にあって、公立病院は命と健康を支えるために欠かせない存在である。
住民はサービスの受益者であり、社会保障費を負担して制度を支える立場でもある。自治体や医療関係者は住民を巻き込んで持続可能な地域医療の姿を探らなければならない。

























