兵庫県の斎藤元彦知事が自らの失職に伴う出直し知事選で再選されてから、きょうで1年になる。
告発文書問題に端を発した県政の混乱はいまだに収まっていない。県の第三者調査委員会が「違法」と認定したパワハラや公益通報への対応などを巡り、知事は自らの非を認めようとしない。会見などで紋切り型の受け答えを繰り返し、疑惑を払拭する説明責任も果たしていない。
反省や自身の責任について率直に語ることこそ知事が強調する「県民の負託」に応えることではないか。
知事はこの1年の県政運営を振り返り、「県民の暮らしや命、未来を支えるための施策が着実に実施できた」と自己評価した。若者支援として県立大授業料無償化や県立高校の環境整備、不妊治療の支援条例制定などを実績に挙げた。
しかし、元西播磨県民局長(故人)が知事のパワハラなどの疑惑を告発した文書問題を巡っては「初動から懲戒処分まで対応は適切だった」との姿勢を変えていない。
第三者委は3月、調査報告書で知事のパワハラ行為を認め、「告発者捜し」をした県の対応を公益通報者保護法に照らし「違法」と断じた。知事はパワハラは謝罪したが、元局長への対応に関しては「見解が違う」と今も聞き入れずにいる。県議会調査特別委員会(百条委員会)が「違法の可能性」などと総括した調査報告も受け入れを拒んでいる。
いずれの結論も「真摯(しんし)に受け止める」と言うものの、具体的な行動には移さず、受け流すばかりだ。独善的で無反省な態度は行政トップとしての資質に欠けると言うほかない。
元局長の私的情報が漏えいした問題で、県の第三者調査委員会は「知事らが指示した可能性が高い」と結論づけた。知事は関与は否定し、管理責任を取る形で自らの給与を減額する条例改正案を提出した。しかし、県議会からは「説明不足」を批判され、賛同を得られないままだ。
この問題を巡り、知事は前総務部長に情報漏えいを指示したとして地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで告発され、捜査が続く。昨年の知事選では選挙運動の報酬をPR会社に支払ったとして公選法違反(買収)の疑いで告発されたが、神戸地検は不起訴処分(嫌疑不十分)とした。知事は「一定の決着をみた」とするが、丁寧な説明が不可欠である。
知事選では交流サイト(SNS)で真偽不明の情報や誹謗(ひぼう)中傷が大量に流され、有権者が斎藤氏の支持派と反対派に割れるなど、深刻な対立が生じた。それは今も解消されていない。知事は分断の収束に向け、自ら率先して対話できる環境づくりに取り組むべきだ。
























