東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)の再稼働を巡り、同県の花角(はなずみ)英世知事が容認の意向を明らかにした。県内首長との懇談や県民意識調査などを踏まえ、「国や東電の安全対策などが認知されれば、理解が広がる」と述べた。準備が進むのは6号機で、実現すれば、東電にとって2011年の福島第1原発事故後、初の再稼働となる。
総出力が世界最大級の柏崎刈羽原発は、首都圏の電力需要を支える。「原発依存度の低減」から「最大限活用」にかじを切った政府の意向に沿う判断であり、エネルギー政策に関しても大きな転換点となる。
知事は国側に、安全性や緊急時対応に関する7項目を求めた。これらが再稼働の前提となるのは当然だ。史上最悪レベルの事故を起こした企業への視線は依然厳しい。東電は地元の不安を十分に自覚するべきだ。
6号機は10月に技術的な準備が整い、地元同意が焦点となっていた。花角知事が判断材料の一つにした県民意識調査では「対策をしても再稼働すべきでない」と考える人が半数を占め、「再稼働の条件は整っていない」との回答は6割に上った。
原発30キロ圏内の自治体では知事の判断を尊重する首長が多い中、磯田達伸長岡市長は、是非の判断は時期尚早とした。住民と首長の意見がそれぞれ割れる中での容認の判断は、拙速だったのではないか。地域の分断を招かないかも懸念される。
第1原発の廃炉や被災者への賠償など多額の事故対応費用を抱える東電には、1基当たり年間約1千億円の収支改善が見込める再稼働は、長年の悲願だった。東電は10月、全7基のうち1、2号機の廃炉検討と、地域貢献として計1千億円規模の資金拠出を県議会で表明した。
再稼働が経営再建の頼みの綱とはいえ、その引き換えにあからさまな見返りを示すような姿勢は好ましいとは言い難い。地元には期待の声がある一方で反発も出ている。
忘れてならないのは、準備の過程で東電が失態を繰り返してきた問題だ。侵入検知設備の故障などテロ対策の不備が重なり、4年前に原子力規制委員会から事実上の運転禁止命令が出された。今年に入ってからも、テロ対策に関する秘密文書の管理不備が見つかった。組織の体質への不信は解消されていない。
花角知事は容認の判断を12月の県議会に諮り、地元同意の手続きを終える方針だ。県議会は今年、再稼働の是非を問う県民投票条例案を否決した。住民の直接の意思表明を認めないのであれば、なおさら幅広い意見に耳を傾ける必要がある。議会には、民意を尊重した議論を尽くす責任が課せられている。
























