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 歯止めなき武器輸出を認めるわけにはいかない。

 自民党と日本維新の会は、防衛装備品の輸出ルール緩和を高市早苗首相に提言した。非戦闘目的に限定する「5類型」を撤廃し、戦闘機やミサイル、護衛艦など殺傷・破壊能力を持つ武器の輸出を原則容認する。政府は4月にも防衛装備移転三原則の運用指針改定を目指している。

 実現すれば、戦争せず、他国の武力紛争に加担しない「平和国家」を掲げてきた戦後日本の安全保障政策の大転換となる。与党間の連立合意事項というだけで、国会審議も経ずに変えていい政策ではない。

 提言によると、輸出先を秘密保護などに関する協定を結んだ国に限るが、対象国は既に18カ国に上る。戦闘中の紛争当事国への輸出は原則不可としたものの、安保上の「特段の事情がある場合」は例外を認める。

 最大の懸念は、判断に国会が関与しない点である。輸出の可否は首相や関係閣僚による政府の国家安全保障会議(NSC)が審査し、国会承認どころか閣議決定も要件としない。政府が恣意(しい)的な運用に走っても歯止めとなる仕組みが見当たらず、武器輸出が際限なく拡大しかねない。

 共同通信の全国世論調査では、殺傷能力のある武器輸出を「認めるべきではない」との回答が56・6%を占めた。高市首相は国会で丁寧に説明し論戦に正面から応じるべきだ。少なくとも国会承認や輸出後の監視などの手続きは不可欠である。

 1976年に三木内閣が出した武器輸出三原則の統一見解以来、政府は事実上の禁輸方針を維持してきた。だが2014年に安倍政権が防衛装備移転三原則に衣替えし、緩和への道が一気に広がった。

 提言は、安保環境が厳しさを増す中、武器輸出の緩和には同盟国や同志国との防衛協力や有事の継戦能力を確保する意義があるとした。加えて首相は「経済成長につながる」とも強調している。ただ、武器輸出を経済政策の柱とするのは成長戦略が行き詰まっていることの表れとも言える。政府の投資で一部の防衛産業は潤ったとしても、国民生活の豊かさにつながるかは不透明だ。

 日本の軍事大国化を警戒する周辺国との緊張を高め、輸出した武器が他国の人々を殺すことになれば国際社会の信頼も損なう。こうしたリスクにも目を向ける必要がある。

 首相は「国論を二分する政策」に挑むとして、安保関連3文書の改定による専守防衛や非核三原則の見直しにも意欲を示す。憲法の平和主義に基づき堅持してきた国是を一政権の独断で手放していいのか。国民の懸念に真摯(しんし)に向き合い、国会で慎重に議論しなければならない。