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 政府は、災害対応の司令塔機能を担う防災庁の設置法案を国会に提出した。発災時から復旧・復興まで一貫して対応する体制をつくるほか、平時から被害の抑制策を検討する「事前防災」の強化に力を入れる狙いがある。人員や体制を増強する意義は大きいが、実効性が伴わなければ機能しない。国会審議を通じ、組織の充実につなげねばならない。

 防災庁は石破前政権が設置の方針を打ち出し、高市早苗首相が引き継いだ。政府は11月の発足を目指す。内閣直属の組織とし首相をトップに位置付ける。内閣府防災担当を改組し専任閣僚を置く。副大臣と政務官、事務次官も配置する。本庁は地域防災力の強化や政策調整を担う部門など4部局で構成し、定員は352人と現行の1・6倍とする方針だ。

 事前防災の推進のほか、2024年1月の能登半島地震などで災害関連死が相次いだ教訓を踏まえ、避難所の環境改善、被災者や自治体への支援体制の構築にも努める。防災・減災への人工知能(AI)などデジタル技術の活用にも力を注ぐ。

 期待されるのが、縦割り行政の弊害を排除する役割だ。現状では内閣府や国土交通省、防衛省などが個別に実施している施策を一元的に推進するため、防災庁には他府省庁への勧告権が与えられる。各省庁は尊重する義務を負うが、それだけでは十分ではない。平時からの連携強化など、防災庁が指導力を発揮できる環境整備が欠かせない。

 専門人材の確保も重要になる。当面は現行の内閣府防災担当と同様に他省庁からの出向者で構成されるが、数年単位で入れ替わるため知見の蓄積が期待しにくい。そこで法案には省庁や自治体職員らへの研修のほか、研究も行う「防災大学校(仮称)」の設置を盛り込んだ。災害時に適切に対応できるよう、独自で必要な人材を計画的に採用し、養成することが求められる。

 南海トラフや日本海溝・千島海溝など巨大地震への備えも急ぐ必要がある。発足後の27年度以降、両地震の被害想定地域に地方機関「防災局」を各1カ所設ける予定で、兵庫県や関西広域連合など40団体が誘致に名乗りを上げている。

 地域防災力の向上や迅速な復旧・復興へ防災庁に対する自治体の期待は大きく、協力して対策を改善・強化することも重要な任務となる。発生15年が経過した東日本大震災の復興政策の知見や教訓を生かすため、復興庁との連携も検討してほしい。

 一方で、防災局には他省庁の地方機関との役割分担が見えにくいとの指摘もある。巨大災害はいつ起きてもおかしくない。政府は庁全体の制度設計を綿密に行うべきだ。