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 障害を理由とする差別を禁じ、誰もが人格と個性を尊重し合う社会を目指す障害者差別解消法の施行から、今月で丸10年を迎えた。2021年の法改正により、当初は努力義務にとどまっていた民間企業による障害者への「合理的配慮」の提供が24年4月から義務化された。

 同法は、不当な差別的取り扱いの禁止と、社会の側にあるバリアを取り除く「合理的配慮」を柱に据える。障害者が被る不利益は本人の責ではなく、施設の不備や人々の意識によって生じるという「社会モデル」の考え方を掲げた意義は大きい。

 法施行を機に公共施設や交通機関のバリアフリー化は加速し、店舗でも聴覚障害者への筆談や視覚障害者への読み上げの対応といった接客が広がりつつある。兵庫県は「合理的配慮アドバイザー」を事業所に派遣し、現場での柔軟な工夫を引き出す後押しとなっている。

 しかし、理念の浸透を阻む課題は依然として根深い。

 まず、「合理的配慮」の線引きだ。法は「過重な負担」がない範囲での配慮を求めるが、明確な基準は示していない。どこまで対応すべきか戸惑う事業者と、希望が通らず落胆する当事者との間で、摩擦が生じるケースが絶えない。

 発達障害や精神障害、高次脳機能障害など、目に見えにくい障害への理解不足も続く。周囲が適切な配慮を欠き、当事者が孤立を招く場面は今なお多い。障害の有無にかかわらず、IT機器を通じて必要な情報にたどり着ける利便性(情報アクセシビリティ)の向上も道半ばだ。

 どんな配慮が求められ、どうすれば差別を解消できるか。答えは法の中ではなく、障害者との誠実な対話の中にある。行政や企業には、障害者を保護やサービスの対象ではなく、社会を共につくるパートナーとして向き合う姿勢が求められる。

 この10年で、障害者にとってのバリアを社会から減らす動きが広まったのは確かだが、法律で決められたから、との義務感で終わってはならない。

 互いに知恵を出し合い、何ができるか考える。その地道な積み重ねが、誰もが「生きづらさ」を感じることのない共生社会を築く礎となる。