確定した刑事裁判をやり直す再審制度の改正を巡り、法務省が迷走している。法相の諮問機関、法制審議会の答申に基づき、刑事訴訟法の改正案を自民党に示したが、批判が続出し、了承は見送られた。審理長期化の要因とされる検察官の不服申し立て(抗告)を温存し、冤罪(えんざい)の救済を遠ざける内容だったためである。
これを受け、法務省は検察抗告について「十分な理由がある場合」に限定し、抗告後の審理期間も1年以内とする修正案を示した。だが議員の反発は収まらず、検察抗告を原則禁止とした上で「十分な理由がある場合は除く」との文言を付ける再修正案を検討している。
姑息(こそく)な言葉遊びと言うほかない。審理の長期化は関係者の記憶の薄れにつながり、公正な審理を妨げる恐れがある。法務省は検察抗告を全面的に禁じ、速やかに再審を開始する内容に改めねばならない。
静岡県の一家4人殺害事件で再審無罪が確定した袴田巌さんは、2014年に静岡地裁で再審開始の判断が出されたにもかかわらず、検察の即時抗告により再審公判の開始は23年までずれ込んだ。制度改正の議論は、無実の罪を着せられた被害者の早期救済に主眼を置くべきだ。
法制審では、検察官の委員らが抗告禁止に反対した。「三審制を経て確定した判決を、地裁の1度の判断で覆すのは不合理」との理由からだが、理不尽極まりない。
これまでの冤罪事件では、検察側が不利な証拠を確定審の段階では開示せず、「証拠隠し」とも言える姿勢が目立った。袴田さんの再審無罪の判決では捜査側による証拠の捏造(ねつぞう)まで認定された。
三審制を揺るがしているのは検察側ではないか。必要な証拠に基づかない判決は、最高裁の判断でも白紙に戻し審理を尽くすべきである。
改正案は証拠開示の規定も不十分と言わざるを得ない。裁判所が検察に必要な証拠開示を命じる制度は盛り込まれたが、見過ごせないのは再審手続き以外の「目的外使用」を禁じ、罰則まで設けたことだ。再審請求の審理自体も非公開であり、示された証拠を支援者らが共有し精査する機会を奪うのは容認できない。
再審請求の理由にかかわらず、幅広い証拠が弁護側に開示される仕組みに改めてもらいたい。
検察側が冤罪事件を真剣に反省し、教訓をくみ取ろうとしているようには見えないのも残念だ。
袴田さんの再審無罪判決に対し検察が控訴を断念した際、畝本直美検事総長は「到底承服できない」などと判決を批判し、袴田さんの姉らを傷つけた。体面にこだわる姿勢を捨てない限り救済の道は遠い。























