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 神戸市北区の民家「箱木家(はこぎけ)住宅主屋」と姫路市安富町の民家「旧古井家住宅」について、国の文化審議会が、国宝に指定するよう松本洋平文部科学相に答申した。兵庫県内の国宝建造物は姫路城(姫路市)、一乗寺(加西市)、浄土寺(小野市)、鶴林寺(加古川市)、朝光寺(加東市)、太山寺(神戸市西区)にある11件しかなく、建造物の指定は1955年以来、71年ぶりとなる。

 箱木家住宅主屋は室町時代の14世紀ごろに建てられた国内最古の民家とされる。旧古井家住宅も15世紀の建築で、いずれも江戸時代には「千年家(せんねんや)」と呼ばれていたという。国の重要文化財のうち、極めて価値が高く文化史的意義の深いものが国宝に選ばれる。私たちの郷土に中世からの民家が二つもあり、それが同時に指定されるのは誇るべきことだ。

 これまで民家が国宝になった例はなく、今回初めて実現する意義も大きい。建造物自体の価値に加え、そこで営まれた近代化以前の暮らしを知るきっかけにもしたい。

 箱木家住宅はダム建設に伴って約70メートル南東に移築され、つくはら湖岸に立つ。旧古井家住宅は揖保川の支流・林田川沿いの谷あいにある。両住宅とも入り母屋造り、かやぶき屋根という典型的な日本民家の姿だ。ただし後世の建物より柱や梁(はり)が細い関係で、軒が低いという。時代による違いが見えて興味深い。

 両住宅は当初の部材が残っていることや、内部を3室に区切る「前座敷型三間取(みまどり)」という間取りである点でも共通する。箱木家住宅の柱の一つは、1200年代に伐採されたマツだと判明したというから驚く。

 二つの住宅は1967年に国の重要文化財になった。国宝指定に向けて、文化財的価値を裏付けたのは、神戸市と姫路市による異例の合同調査だった。調査手法や担当する専門家を一本化し、科学的に「日本一の建物」と証明したという。他の調査でも参考になるに違いない。

 旧古井家住宅は「無災の千年家」と呼ばれる。地域で大切に守られてきた証左だ。市が建物を所有する今も集落の有志が管理を担う。どちらの建物も、継承するための地元の苦労は並大抵ではなかっただろう。

 今後、国宝を地域の活性化につなげる工夫も期待される。屋根のふき替えなどの補修や見学者対応など、保存しつつ活用を図るための課題は少なくない。行政側にはしっかりと支援してほしい。

 歴史的な町並みを大切にする欧州などと違い、日本では多くの貴重な建物が失われてきた。民家を含め、建築はその地域の歴史や文化を色濃く反映する。社会全体で保全する機運が高まることが望まれる。