ウクライナに侵攻したロシアが、首都キーウへの弾道ミサイルなどによる攻撃を激化させている。市民の犠牲が相次ぎ、世界遺産ペチェルスカ大修道院も被災した。ウクライナがロシア各地のエネルギー施設などを無人機で攻撃し、燃料不足を引き起こしたことへの報復とみられる。
侵攻開始から間もなく4年半となり、ウクライナだけでなくロシアの民衆も疲弊しきっている。これ以上戦闘のエスカレーションを許してはならない。まずは加害国のロシアが無条件に停戦に応じ、終戦に向けた協議を急ぐべきだ。
ウクライナは6月、戦闘地域をロシアが侵攻する東部・南部4州に限定し、相互の長距離攻撃を停止する新たな提案をしたが、ロシア側は受け入れなかった。現実的な提案を拒否する姿勢は理解し難い。これまでの交渉でも、4州の全面的な併合を強硬に主張し合意を妨げてきた。
ウクライナへの侵攻は国際法違反の侵略行為であり、ロシア側が譲歩するべきなのは当然だ。
ロシアのプーチン大統領は今月、東部ドネツク州の要衝コンスタンチノフカを「制圧した」と表明したが、ウクライナ側は「占領されておらず、市街戦が続いている」と否定する。ウクライナ軍の攻勢を伝える報道もあり、戦況は混迷を深める。
最近、衝撃的な数字が公表された。英国の情報機関は、ウクライナ侵攻に伴うロシア兵の死者が約50万人に達するとの分析を明らかにした。米国のシンクタンクも40万~45万人が死亡したと推計し、ウクライナ兵の死者の3倍前後に上るとみる。
おびただしい戦死者が出ている要因は、ウクライナの無人機とロボット兵器の進化だ。にもかかわらず、ロシア側は兵士の犠牲を前提とする無謀な作戦を強行する。ウクライナのみならず自国民の人命を軽視し、領土拡大に固執する姿は、悲惨な戦争の教訓に学ぶ姿勢が欠如していると言わざるを得ない。
プーチン氏は侵攻当初、首都キーウを早期に制圧する腹づもりだったとされるが、ウクライナの頑強な抵抗と国際社会の支援により戦略変更を余儀なくされた。米国とイスラエルのイラン攻撃と同様、「力による平和」の限界を露呈したと言える。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議が開かれているトルコで加盟国首脳らと相次いで会談し、ロシアの弾道ミサイルに対処する防空システムへの支援を求めた。各国が結束し、支える必要がある。
恒久平和の実現には国際協調が欠かせない。イラン攻撃を巡り米国と欧州各国に生じた亀裂を修復し、ロシアへの圧力を強めてもらいたい。























