取り調べや公判を巡り、公正さを欠く検察の対応が次々と明らかになっている。刑事裁判をやり直す再審制度を見直す改正刑事訴訟法が成立したが、冤罪(えんざい)防止の徹底には検察全体の意識改革が欠かせない。
取り調べで捜査対象者を罵倒したとして特別公務員暴行陵虐罪で付審判決定を受けた元特捜部検事の田渕大輔被告の刑事裁判が大阪地裁で始まった。職権乱用事件で不起訴となった公務員を裁く付審判制度で検察官が対象となるのは極めて異例だ。
学校法人を巡る業務上横領事件で不動産会社の元部長を取り調べた田渕被告は、検察側の意に沿わない供述をする元部長を「検察なめんなよ」などと怒鳴ったり、50分間にわたり叱責(しっせき)し続けたりしたとされる。
捜査側の見立てに合う供述を強引な取り調べで得ようとする姿勢は、冤罪の要因と指摘されてきた。検察は暴言や威圧を根絶し、自白を過度に重視する捜査手法を根本から改めなければならない。
見過ごせないのは、田渕被告の取り調べ映像をチェックした検察官2人が問題視せず、報告を受けた地検トップの検事正らも映像を確認しようとしなかったことだ。組織的な機能不全との批判は免れない。
再審無罪となった事件では、被告に有利な証拠の隠蔽(いんぺい)とも言える対応が浮き彫りになっている。
1986年の福井中3殺害事件で服役した前川彰司さんの再審無罪を受け、名古屋高検が公判担当検事らを聴取した調査で、一審以降に関わった検事のうち少なくとも6人は、再審無罪の決め手となった捜査報告書の存在を認識していた。
6人は捜査報告書の内容が検察側の主張と矛盾すると感じたが、有罪は揺るがないと判断し、証拠の提出や開示を働きかけなかった。この報告書は第2次再審請求審で裁判所の求めによりようやく開示された。
検察側が報告書を早期に開示していれば、名誉回復が早まった可能性がある。最高裁は75年、再審請求審でも「疑わしきは被告人の利益に」を順守すべきだとする判断を示したが、その原則を軽んじていると言わざるを得ない。
再審制度見直しでは証拠開示の在り方が問われた。17日成立した改正刑訴法は裁判所が検察に証拠提出を命じる制度を創設した。一方で開示対象は再審請求理由に関連する証拠に限り、開示後の「目的外使用」を罰則付きで禁じるなど制約が多い。
2010年の証拠改ざん事件の反省と教訓を踏まえ、最高検が明文化した「検察の理念」には「真相解明に取り組む」「容疑者や被告の主張に耳を傾ける」とある。原点に立ち返らねば信頼は取り戻せない。
























