選挙運動に関する交流サイト(SNS)対策の改正法が国会で成立した。SNS事業者に対し、偽情報による悪影響が出ないよう対策を促す内容だ。一定の前進だが、事業者任せの部分が大きく、罰則規定もない。実効性に疑問が拭えず、さらなる対策を急ぐ必要がある。
公職選挙法と情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)が改正された。来年3月1日に施行され、来春の統一地方選にも適用される。
改正公選法は、インターネット上に候補者について虚偽の情報を公開することで「選挙の公正を害することがないようにしなければならない」と明記した。人工知能(AI)で作成・改変した候補者の画像や動画を投稿した場合は、AIで作成したと明示する義務を課した。
改正情プラ法は、事業者に対し偽情報への「必要な措置」を求め、実施状況を年1回公表するよう義務づける。必要な措置は総務相が今後、指針をまとめる。改正法の付帯決議では、収益化の停止措置、AI生成コンテンツについての表示機能の実装などを挙げた。ただ法的拘束力がない上に、膨大な投稿に対し、どの措置を実施するかは事業者の判断に委ねられるため効果は見通せない。
SNS上での候補者への偽・誤情報や誹謗(ひぼう)中傷は、2024年11月の兵庫県知事選や25年10月の宮城県知事選などで社会問題となった。与野党が対策に着手したが、結論を出せないまま、今年2月の衆院選でもデマや不正確な情報が拡散されるなど事態は深刻さを増していた。対策は後手に回り、今回の立法措置も必要最小限の内容にとどまった。
抜本的な対策が必要なのは、動画などの閲覧数が投稿者の広告収入につながる仕組みだ。視聴者の関心を得るため、根拠が不明確で刺激的なコンテンツが拡散する温床になっている。民主主義の根幹である選挙の公正さを守るため、期間中は選挙や政治に関する投稿を収益化の対象から外すべきである。収益化の停止は投稿自体を制限するものではなく、憲法が保障する「表現の自由」の侵害には当たらない。
選挙期間中に政党がSNSに出す有料広告の制限についても対策が不可欠だ。公選法は候補者個人の有料広告を禁止しているものの、政党が政治活動として出すことへの規制はない。2月の衆院選では、高市早苗首相が登場する自民党のネット広告が大量に流され、大勝の一因になったとされる。資金力に勝る政党に有利に働くような不公平な状況は早急に是正しなければならない。
SNSを利用する有権者も根拠不明の投稿に惑わされず、情報の真偽を正しく読み解く力が求められる。
























