神戸新聞NEXT

 夏山シーズンが最盛期を迎えている。猛暑を避け、清涼な山の空気を求めて出かける人も多いだろう。ただ、近年は遭難事故が増えている。入念な計画と十分な装備を忘れず、安全最優先に自然を満喫したい。

 登山ブームの中で、山岳遭難件数の増加に歯止めがかからない。警察庁によると、2025年の発生件数は前年に比べ176件増え、3122件だった。遭難者数は前年比266人増の3623人で、過去最多を更新した。死者は同34人増の299人だった。遭難者全体の半数近くを60歳以上が占める。無理な行程は避け、自らの体力や技量に見合った目的地を選ぶことが欠かせない。

 日差しの厳しい夏山では、熱中症のリスクがあることに留意したい。近年の異常な暑さで、標高が高く平地より涼しい山であっても、熱中症にかかる人が増えているという。体力を奪われれば、大事故につながりかねない。遮熱と換気効果のある帽子を着用し、水分補給や適度の休憩を心がける。体調不良を感じたら、無理をせずに引き返す判断をいとわないでほしい。

 クマなど野生動物への警戒も怠ってはならない。昨年8月には、北海道・知床の羅臼岳で登山客がヒグマに襲われ死亡する事故があった。今年も春以降、クマによる人身被害が各地で相次いでいる。出没情報に注意し、クマに存在を知らせるための鈴やラジオを鳴らしたり、クマよけのスプレーを持参したりするなど対策の徹底が求められる。

 遭難の原因別では「道迷い」が最も多く、「転倒」「滑落」が続く。低山であっても、甘く見るのは禁物だ。兵庫県内で最も遭難者が多いのは「六甲山系」で、全体の約半数に上る。都市に近く、登山経験の少ない初心者もハイキング感覚で気軽に登れるのは魅力だが、登山道を外れて道に迷うケースが多発している。単独登山の場合は遭難すると、命の危険にさらされる確率が高まる。

 どんな山でも、事前にルートを確認した上で、地図やコンパスはもちろん、電波の届かない場所でも衛星利用測位システム(GPS)を利用して現在地を把握できるスマートフォンアプリなどを携行したい。

 万一の事態に備え、名前や携帯電話番号、日単位の行動予定などを記す登山届を、自治体などに提出しておくことも重要だ。届けていれば、遭難した場合、早期の捜索や救助活動の手がかりとなる。オンラインで受け付ける自治体も増えており、提出は自分自身を守る最低限のルールだと肝に銘じておこう。

 訪日外国人の遭難も急増している。国や自治体は多言語での情報発信など周知を強化する必要がある。