熊本地震では多くの企業が被災した。九州には半導体や自動車をはじめ幅広い分野の製造業の主要工場が集積し、影響の長期化が心配されたが、早期の復旧にこぎつけた企業は少なくない。全ての企業は「わが社ごと」とし、取引先を含めた防災対策の強化に教訓を生かしてほしい。
復旧の早さが目立ったのは熊本県内の半導体工場だ。「産業のコメ」と呼ばれ、さまざまな製品に使われる半導体の供給が滞れば影響は極めて大きい。そのため急ピッチで復旧作業が進められた。受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)や、三菱電機、ソニーグループなどは地震後1週間以内に順次生産を再開した。8月中にも被災前の稼働体制に戻る見通しという。
震度7の揺れが2回起きた2016年の熊本地震では、復旧までに数カ月かかったケースもある。今回の地震では、10年前より被害の範囲が限定的だったことに加え、前回の被災後に工場を耐震補強したり、地震想定の訓練を重ねたりしたことなどが早い復旧につながった。
自動車産業でも過去の被災経験が役立った。トヨタ自動車グループの部品メーカー、アイシンは、16年の地震で熊本市内の子会社工場が約4カ月停止した。このとき業界全体に打撃を与えたことを踏まえ、生産体制の分散や在庫の積み増しに取り組んできた。今回は地震発生の5日後に一部製品の生産を再開した。
トヨタ自動車や日産自動車などの自動車メーカー各社は、地震の影響で九州や本州の工場が一時稼働停止に追い込まれたが、一部を除き再開の動きが進んでいる。
生産ラインや仕入れ先の分散、在庫水準の引き上げなど、供給を維持するためにソフト、ハード両面で備える重要性が改めて示された。いずれもコスト増につながる可能性があるだけに、各企業の経営戦略が問われよう。
イオンモール熊本の爆発事故ではマニュアルの不備などが明らかになった。イオンやイオンモールの社員が、現場の判断でテナントの従業員らに避難後の再入館を許可していた。避難後の私物回収や帰宅困難者への具体的な対応は想定外だったという。商業施設や観光施設の運営事業者は、非常時に従業員と客の安全を守れるか、マニュアルや訓練内容を早急に点検する必要がある。
熊本県内では被災した近隣の取引先企業を支援しようと、事務機器や建設資材を供給する動きが見られる。会社の枠を超え、地域の中で他社と協力しながら復旧を目指す。地域のレジリエンス(復元力)を高める視点を防災に取り入れ、具体策に落とし込むことが求められる。
























