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 政府は、品薄で価格が高騰した「令和の米騒動」を受けて2025年3月から市場に放出した備蓄米計59万トンのうち21万トン分を買い戻す。18日にも随意契約を実施する。

 備蓄量を適正水準に回復させることは、食料安全保障の観点から妥当な判断と言える。ただコメ余りによる価格の下落を抑え、農家を保護する狙いもにじむ。ようやく価格が下がってきた状況を歓迎する消費者の理解を得られるのか。政府は買い戻しを継続する方針だが、その量や時期によっては価格を押し上げる恐れがある。市場への影響を見定めながら慎重に判断するべきだ。

 24年夏に始まった米騒動は、猛暑による23年産米の品質低下、インバウンド(訪日客)の需要増などが重なり、コメが深刻な不足に陥り価格が高騰した。5キロ当たりの平均店頭価格は2千円前後から4千円台半ばまで跳ね上がり、購入制限が実施されるなど社会問題となった。

 備蓄米の適正水準は、10年に一度の不作でも安定供給できる100万トン程度とされる。昨年来の放出により32万トンにまで減っている。大規模災害や不作などに備え、計画的な買い戻しは必要である。

 一方、25年産米の作柄がおおむね良好だったことから、今年6月末時点の民間在庫が243万トンと過去最高水準に膨らんだ。豊作が見込まれる26年産の新米も出回り始め、一転してコメは余剰気味となり、平均店頭価格は3千円余りに下落した。

 買い戻しは米価の急落を懸念する生産現場などから要望があった。鈴木憲和農相は当初、7月下旬までの表明を模索したが、高市早苗首相は物価高対策と整合性を欠くとして慎重な姿勢を崩さなかったという。

 主食であるコメの値段は、物価全般にも大きな影響を及ぼす。生産者と消費者がともに納得できる価格へバランスをどう取るかが課題だ。政府は、買い戻しの目的や予想される影響などを丁寧に説明し、双方の理解を得ていく姿勢が欠かせない。

 大切なのは、弱体化する農家の生活基盤を支える政策である。担い手は高齢者が中心で、肥料や農薬などの生産コストも上昇が続く。近年は気候変動がもたらす異常高温や集中豪雨が経営を脅かす。採算がとれなくなれば離農が加速しかねない。一定の所得を保障するなど、セーフティーネットの構築が求められる。

 政府のコメ政策は「需要に応じた生産」が基軸だ。昨年、石破前政権が増産方針を打ち出したものの、高市政権は一転して元に戻すなど、迷走が甚だしい。政府は、目先の需給調整だけでなく、農家が生産意欲を高め、コメ作りを続けられる基盤の強化に力を注がねばならない。